加熱する「中国フィンテック戦争」 バイドゥがアリババに大敗北

バイドゥのCEO Robin Li photo by VCG /gettyimages

バイドゥは18日、米消費者金融のスタートアップZestfinanceに出資したと発表した。両社は、ZestfinanceのAI技術とバイドゥの検索、位置情報、決済データを組み合わせ、米国のFICOスコアのような全国規模の信用情報データがない中国で、クレジット・スコアを計測する仕組みの構築に取り組む。

バイドゥは6月、米ブロックチェーン決済Circleにも出資している。昨年末には独保険会社アリアンツ(Allianz)、プライベートエクイティのHillhouse Capitalとオンライン保険会社を設立し、中国のCITICグループ(中国中信集団)と組んでオンラインバンクも設立した。

86 Research.(八六証券研究)のアナリスト、ワン・シャオヤンは「バイドゥは検索事業以外の成長分野を探してきた。これまでの投資対象はほとんどO2O関連だったが、最近ようやくフィンテックに目を向け始めた」と語る。

検索事業が不振のバイドゥ

コア事業のオンライン検索が振るわないバイドゥは、事業の多様化を模索している。バイドゥの検索で表示された医療機関で治療を受けた大学生が死亡する事件が発生し、当局が調査に着手したことを背景に、バイドゥは6月、第2四半期の売上高予想を10%下方修正した。

バイドゥはオンライン動画でも苦戦している。2月には傘下の動画サイト運営会社iQiyi(愛奇芸)の株式の80.5%を、バイドゥ会長リー・ヤンホン(李彦宏)とiQiyi創業者のゴン・ユー(龔宇)が率いるグループに28億ドルで売却することを提案した。

ただし、インターネット金融分野はアリババとテンセント(騰訊)が既にシェアを固めており、バイドゥの進出は遅きに失した感がある。

アリババの決済市場シェアは6割

クレディ・スイスの調査によると、アリババの金融部門、アント・ファイナンシャル(螞蟻金融服務集団)が運営する決済アプリ、アリペイは中国のネット決済マーケットシェアの58%、テンセントは20%を持っており、2018年にはそれぞれ59%、25%にシェアを拡大すると見込まれる。

アリババとテンセントは自社の決済アプリに、クレジット、ローン、資産マネジメント商品をリンクさせており、サービスに誘導できるほか、アプリで蓄積したユーザーの金融行動データを、自社のクレジット・ローン事業に活用できる。一方でバイドゥの決済アプリ、バイドゥウォレット(百度銭包)は中国のトップ5にも入っていない。

香港のArete Researchはバイドゥの投資評価を“ネガティブ”に引き下げた。アナリストのリー・ムージーは、「バイドゥは2013年からネットファイナンスへの投資を始めているが、特段の成果は出ていない」と手厳しい。

バイドゥは人工知能や自動運転などの技術開発にも力を入れている。北京で昨年末、自動運転カーのテスト走行を披露し、5月には同社の自動運転カーの導入協定を蕪湖市政府と結んだ。

86 Researchのワンは言う。「バイドゥはトップ科学者のチームを擁している。インターネット金融よりは人工知能や自動運転技術の方が成功の可能性が大きい」

編集=上田裕資

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