テレビの唯一の強みが、生放送番組だった。フェイスブック・ライブは、その生々しさとのぞき趣味的な魅力、高い中毒性と即時性をもって、そこに直接攻撃を仕掛ける。実際に、存在があまり知られていない「ライブ・マップ」という機能を使えば、60か国以上で行われているライブ中継をのぞき見することができる。ダイヤモンド・レイノルズとマイケル・ケヴィン・バウティスタの映像は、世界で視聴者を待っている何万ものライブ中継のほんの一部にすぎない。
フェイスブック・ライブが2015年8月に著名人を対象にサービスを開始したのは、競合他社に追随してのことだった。同等の機能を持つライブ中継アプリは当時、ミーアキャットやツイッター傘下のペリスコープが既に配信していた。フェイスブックが違ったのは、そこに友人や家族などの視聴者がすでに存在していたこと。俳優のドウェイン・ジョンソンら著名人によるベータテストは成功を収め、2016年4月の完全リリース時までには、一般大衆も魅了するほどに磨き上げられていた。
フェイスブックは、この機能が秘める大きな可能性に気付いていた。開発者らにAPIを公開し、ニュースフィードのアルゴリズムに若干の変更を加えて動画や友人や家族の投稿の表示件数を増やした。狙いは、ライブ中継が目に留まりやすくすること。一度見始めたら止められないことが分かっていたからだ。
新旧メディアは長い間、視聴者の奪い合いを続けてきた。一方、フェイスブックやネットフリックス、グーグルなどのインターネット企業はおおむね順調に成長を続けてきた。テレビ業界は、ライブ中継には必ず視聴者がつくということに、心の安らぎを求めてきた。そんな思い込みに、フェイスブック・ライブは挑戦状をたたきつけるだろう。