キャリア・教育

2016.07.18 08:30

柳井正と孫正義に共通する「原体験」と「失敗力」

Photo by Gettyimages

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韓国で大富豪になるためには「金のスプーン」が必要とされるが、日本は違う。ただし、大きな成功を得るために、通り過ぎなければならない「道」がある。

日本最大の優良企業とされるトヨタ自動車は、時価総額も日本一である。そのトヨタの創業家出身の豊田章男社長はなぜ長者番付に現れないのか。

ランキングの上位者の顔ぶれを見るとわかるように、日本の大金持ちの大半は自分で起業して成功を収めた「創業者」である。サラリーマン社長でランクインした者はない。そしてついで多いのが継承者。一代で財を成した成功者の子孫である。豊田章男は後者に当たるが、残念ながらトヨタでは創業者一族が保有する自社株は、一族合わせて7%。ランキング1位の柳井正個人の自社株保有率は21%、2位孫正義は19%と比べるべくもない。

ちなみに、世界一のビル・ゲイツの資産のほとんどは自社株評価額とされる点からも、ビリオネアになるための条件のひとつは「創業者たれ」であると言っていい。

だが日本ではそれが簡単ではない。何しろ大卒就職率が日本ほど高い国はそう多くないからだ。2015年に文部科学省が調査した結果によると、15年春に約56万4,000人が大学を卒業し、その72.6%にあたる約40万9,000人が就職したという。

この数字の異常さは、他国と比べると際立つ。米誌「ビジネスウィーク」(10年6月7日号)の調査によると、アメリカの就職率は24.4%、イギリスでは15%、中国で70%なのに対し、日本は91.8%だった。

そもそも日米では起業する者の絶対数が圧倒的に違う。日本では毎年約12万社の法人が新設されているのに対し、アメリカでは“毎月”約55万社が設立され、1,440万人がそのチャレンジに関わっている。アメリカの労働人口の7%弱に当たる数字だという。実際、起業大国アメリカでは、一流大学のビジネススクールを出た者で大企業に就職する例は極めてまれだ。大半が自分で起業するか、面白そうなベンチャー企業に参加する。

ではそんな環境で、柳井や孫はなぜ創業者たることが可能だったのか。
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文=鈴木裕也

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