インドは急速な成長を遂げている市場で、ネット通販の売上も急上昇している。2015年、同国におけるネット通販の売上は63億ドルから160億ドルへと爆発的に増加。インターネット接続が不安定で、多くの人がクレジットカードさえ持っていないことを考えればなかなかのものだ。とはいえ、依然として小規模で、比較的貧しい市場に対する投資として50億ドルはかなりの規模に思える。
アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスはIT系メディアのリコード(Recode)主催のイベント「コード・カンファレンス(5月31日~6月2日)」で、ビジネスモデルを成功に導くものは何かについて語った。
当初、書籍のネット通販ビジネスの規模から考えて、アマゾンウェブサービス(AWS)への巨額の投資は“どうかしている”と言われたという。だがそれでもアマゾンはAWSの投資を断行し、ストレージとコンピューターの処理能力、分析論を追加した。アマゾンが書籍以外のカテゴリーにも進出し、同社の小売ビジネスが拡大するなかで、AWSの意義が発揮されるようになっていった。
だがその素晴らしさが明らかになったのは、アマゾンが世界中のソフトウェア開発者にAWSを解放した時だ。アマゾンは自社が立ち上げたビジネスで、自らが初の、最良の顧客となり、その後にそれらのサービスを第三者向けに販売したのだ。
インドでは、ビジネスを行うコストが高い。インターネットや銀行業務の枠組みの欠如よりも大きな問題が、物的インフラの整備のまずさだ。物流管理が大変だが、それでもアマゾンは多くの倉庫や流通のハブのネットワークを築いている。
米国内と異なり、米国郵便公社(USPS)やユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)、フェデラル・エクスプレス(FedEx)に手頃な価格での配送を頼ることはできない。そのため同社では、企業ブランドにふさわしいやり方で顧客に荷物を届けるためのネットワークを模索し、特に厳しい地形の場合には、ドローンを使って届ける試験さえ行っている。
決して安い投資ではない。それでも同社がインドでの物流ビジネスに投資を行うのは、アマゾン・ドットコムが初の、そして最良の顧客であるため、理にかなっているからだ。