同社のマギー・ウー(武衛)最高財務責任者(CFO)もまた、6月15日に行った投資家向け説明会で、アリババのGMVは同年までに現在の3兆900億元から約6兆元(約95兆3,300億円)に倍増すると述べている。
しかし、この天文学的なGMVの数字は、米国の証券取引監視当局に疑いの目を持たせている。算出方法に問題がある可能性が指摘されているのだ。投資家たちも、アリババが示す数字を信頼できるのかどうか、明らかにしたいところだろう。
アリババは、これが信頼に足る数字だと主張している。一方、米証券取引委員会(SEC)は、それが事実なのかどうか確かめるための調査に乗り出している。中国政府の統計によれば、同国の2015年の消費財売上高は、30兆1,000億元だ。
市場規模の拡大は確実
中国のネット小売市場の規模は、2013年に米国を超えた。ネット通販は人々の購買習慣を大きく変え、それによって中国のネット小売業者だけでなく、百貨店での販売にとどまらずネット販売を拡大したい各ブランドにも、大きな機会が与えられた。
アリババのほかにも、中国にはフォーブスの世界長者番付にも名前が挙がる富豪、リウ・チアンドン(劉強東)が創業したJD.com(京東商城)などがある。
中国では、ネット販売の約90%が仮想ショッピングモールでの取引によるものだ。仮想モールはイーベイやアマゾン・マーケットプレイスなどのように、メーカーや大中規模の小売業者、個人などがオンライン店舗を通じて製品・サービスを消費者に提供する市場だ。
一方で、欧米や日本の小売売上高においては、実店舗(ウォルマートやベストバイなど)のほか、自社の商品(実際には仕入れた他社製品も含む)やサービスをネット上に創設した独自運営のサイトで販売する通販サイト(アマゾンなど)の売上が多くを占める。
成長し始めたばかりの中国のネット小売業界のエコシステムは利益性が高く、利幅の伸びも記録を更新し続けている。コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーによると、売上高に対するEBITDA(減価償却前営業利益)マージンは8~10%で、実店舗の平均をわずかながらも上回っている。
マッキンゼーはまた、同分野は2020年まで15~20%の年平均成長率を維持すると予想している。つまり、ネット通販の売上高は、4,200億~6,500億ドルの規模に達する可能性があるということだ。中国のネット通販市場の規模は、すでに米国以上だ。今後も拡大が続けば、アリババは日本と米英独の4か国を合わせた規模に匹敵する市場において、事業を展開していくことになる。