谷本:アニスさんからご覧になって、日本のマーケットはいかがですか?
ウッザマン:VCはもともとドメスティックな業界ですし、歓迎されないと感じるケースもゼロではありません。しかし、グローバルな視点を持ち、海外のVCから出資を受けて、世界レベルの企業を作りたいと考えている起業家も増えてきました。
投資家と起業家という関係においては大歓迎されることも多く、メタップスやマネーフォワード、テラモーターズなど、とても有名な企業に投資することができました。彼らのような起業家経由で、日本の投資家たちとも交流することができるようになったんです。
樋原:これだけ日本語ができるというのは彼の強みですよね。僕より日本語うまいんじゃないかな(笑)。アニスさんは、日本にはお金がたくさんあるにも関わらず、スタートアップに回っていないという問題点をよく理解されていますよね。僕は研究するうえで、日本のVCや銀行などがなぜこの問題を解決できないのか、とても関心があります。
日本のVCにはベンチマークといえるものがありません。アニスさんは、日本の問題点をよく理解しつつも、その影響を受けることは少ないでしょうし、シリコンバレーの構造もご存知ですから、もっと積極的に活動して日本のVCに刺激を与えてほしいですね。
谷本:日本ではスタートアップにお金が回りづらいというのは、どのような理由があるのでしょうか?
ウッザマン:海外のVCが必ずしも歓迎されていない実情からも分かりますが、日本国内のVCだけで、日本から次世代の世界的なブランドを生み出せるのかという視点が欠けているように感じます。
日本から世界レベルの企業を作り出すためには、日本国内のサポートも当然必要ですが、海外のパートナーがいないと難しいでしょう。海外展開しようと考えても単にシリコンバレーに行けばいいわけではありませんよね。
アニス・ウッザマン◎Fenox Venture Capital 共同代表パートナー & CEO。シリコンバレーにてフェノックス・ベンチャー・キャピタルを設立。主に初期投資とファイナルラウンドを専門とし、インターネット、ロボット、AR/VR、IoT、ヘルスIT、フィンテック及び最新技術分野への投資を行っており、ユニークなモデルとグロ-バルなコネクションを使い、新時代のベンチャーキャピタルを運営。現在、全世界で20億~200億円の13のファンドを運営している。
樋原伸彦◎早稲田大学ビジネススクール准教授。1988年東京大学教養学部卒業、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。世界銀行コンサルタント、通商産業省通商産業研究所(現・経済産業省経済産業研究所)客員研究員、米コロンビア大学ビジネススクール日本経済経営研究所助手、カナダ・サスカチュワン大学ビジネススクール助教授を経て2006年立命館大学経営学部准教授。2011年から現職。米コロンビア大学大学院でPh.D.(経済学)を取得。専門は金融仲介論、コーポレートファイナンス、特にイノベーションのためのファイナンス。