ハグし合って久闊を叙すと、話題は中国リスクに集中した。中国は経済が急減速しているだけではなく、政治的にも困難さが増して社会も落ち着かないように見える。バブル崩壊過程の日本の姿が重なり合う。中国もこれについて徹底的に研究しているとも聞く。直ちに戴さんが応じた。
「習主席は本気で中国の夢を実現しようとしている。そのためには国の統治機構の廉潔性を高め、経済の新常態へのスムーズな移行が不可欠だとして、身を粉にして働いているのです。世界経済も中国人の爆買いに支えられているのではないですか」。中国の先行きを懸念する海外の報道は、過剰反応だと怒る。「それに中国は米国と並ぶ大国です。正直なところ、もう日本に学ぶものはないし、その必要もありません」。ちなみに彼女は日本人の夫を持つ大の親日家である。
私に言わせれば、大国の意味が曲者だ。昨今、中国経済が世界のGDPに占める割合は16%だが、20年前の日本のシェアは18%だった。輸出の世界シェアは現在の中国が13%、かつての日本は10%、外国為替取引に占める人民元のシェアはいまだに1%少々なのに、日本円は30年前から今日まで概ね10%強で推移している。この間、米国のGDPシェアはほぼ一貫して25%前後、ドルは国際取引の40%以上の地位を堅持している。中国は日本に学ぶ必要はないほどの大国だ、という発想には違和感がある。
さらに中国にはバブル期の日本にはなかった3つの罠が仕掛けられている。まず中所得の罠で豊かになる前に成長が止まってしまわないか、次に技術革新・ブランド欠如の罠、そして急速かつ不可避の高齢化社会の罠である。
「中国政府は十分織り込んでいます。李克強首相はゾンビ企業の淘汰や過剰設備の削減を繰り返し強調している。構造改革や高付加価値化、ソフト化、サービス経済への移行は習主席の大方針です。北京大学の林教授は、今後10年間は8%成長が可能なので過剰設備すら大した問題ではないと喝破するほどです」
マークが一言。「無理だね。結局、社会主義市場経済なる概念が、永遠に解けないパズルだし大矛盾だよ」。