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2016.03.18

「天才児」の研究が自閉症の秘密を解明? 米研究者が新著

Sudowoodo / shutterstock

天才児とその家族に関する調査を14年間にわたって行ってきた米オハイオ州立大学心理学部のジョアン・ルスサッツ助教授はこのほど、社会学者でジャーナリストでもある娘のキンバリー・スティーブンスと共著で、「The Prodigy’s Cousin」(天才児のいとこ)を出版した。

自閉症と天才児との潜在的な関連性についてまとめたほか、この関連性を裏付ける科学的研究の結果についても触れた新著について、記者の質問のいくつかに対するスティーブンスの答えを紹介する。

天才児と自閉症、サヴァン症候群の関連性

自閉症の人たちと突出した才能の関連性は、すでに認識されている。サヴァン症候群として知られるこの人たちは、特定の分野に天才的な能力を持つ。また、自閉症を持つ人の10人に1人は、サヴァン症候群だといわれる。しかし、「天才児」の大半はサヴァン症候群の子供たちとは異なり、自閉症ではない。

だが、著者たちは自閉症と天才児の突出した能力の間には、何らかの関連性があるかもしれないと考えた。自閉症の人の中には物の形状や位置を自動的に認識するパターン認識や細部への高い注意などに秀でた人たちがいるからだ。

天才児と自閉症の子どもの共通点

自閉症の子供と天才児の最も明らかな共通点は、特定のものに熱烈な関心を抱くことだ。天才児は専門分野として認識されている音楽や芸術、数学などの分野に高い関心を示す。そして、多作の画家として知られるサヴァン症候群のリチャード・ワウロのように、自閉症の人にも同様の傾向を持つ人たちがいる。

天才児はまた、外界から得た情報を一時的に保持する短期記憶(ワーキングメモリー,作業記憶)の機能が並外れて優れている。細部に対する注意力が非常に高く、これは、「自閉症の脳にみられる共通の特徴」と一致する。

そのほかに明らかになってきたのが、天才児は近親者に自閉症の人がいる場合が多いということだ。著者らの調査によると、天才児のおよそ半数には、自閉症を持つ二等親または三等親の近親者がいた。

関連性を示唆する遺伝学的な根拠がある?

遺伝的関連性を示す予備的な証拠がある。ジャーナル「ヒューマン・ヘレディティー(Human Heredity)」に2015年に発表された研究結果によると、天才児と自閉症の子供にはいずれも、1番染色体に変異が起きている可能性があることが分かった。11家族を対象にした小規模な研究の結果であり、実際にどのような変異が起きているかまでは特定できていないが、統計的には有意な結果だ。

自閉症の治療法の確立にこの研究が役立つ可能性は?

天才児は、長所の多くを自閉症の子供たちと共有する一方で、自閉症の子供が抱える問題点は持ち合わせない。この理由を解明することができれば、自閉症に関する研究に有益なものとなる可能性がある。

自閉症を疾患ではなく、神経系の変異とみるべきだと主張する人たちがいる。また、自閉症は疾患であり、科学者らは効果的な治療法の確立に集中すべきだという人たちもいる。自閉症と才能の関係をより良く理解することは、自閉症の子たちの症状と、我々が提供し得る支援の方法についてより深く理解することを助けてくれるかもしれない。

自閉症の子を持つ親たちに伝えたいことは?

自閉症は、(家族や周囲に)深刻な課題を突き付ける場合もある。だが、その子どもが持つさまざまな長所とも関連している。自閉症と天才児の関係がこれほど長期間にわたって解明されずにいるという事実は、自閉症を生物学の見地から理解する方へと(症状を基に診断する現在の方法から離れて)向かって前進することの重要性を強調するものだ。

新たな研究により、自閉症の患者とその家族は治療方法を選ぶ際、情報に基づいたより良い選択を、より容易にできるようになるはずだ。

編集 = 木内涼子

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