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テクノロジー、イノベーションと新会社や事業設立に関する記事を担当

monkeybusinessimages / Bigstock


ある日、一組のカップルが小さな検査キット入りの郵便物を受け取った。中には唾液を採取するためのチューブが2本入っており、2人は料金前納の封筒にそれを入れて返送した。数週間後、2人宛てに30ページに及ぶ「ラブ・マニュアル」というレポートが届いた。レポートには、2人の生化学的構造と心理的構造が詳しく説明されており、カップルとしての相性は73.5%という喜ばしい結果だった。

この検査キットはトロントに本社を置くスタートアップ企業「インスタント・ケミストリー(Instant Chemistry)」がつくったもので、価格は期間限定で149ドル(約1万8000円)。創業者のロン・ゴンザレスは神経科学の博士号を持ち、遺伝子検査に強い関心があった。しかし、医学の道からドロップアウトした彼は恋人仲介業に足を踏み入れ、2013年にインスタント・ケミストリーを創業した。

創業当初のインスタント・ケミストリーはSINGLDOUTという出会い系サイトと共同で、DNAの検査結果を利用し恋人候補を探すサービスを開発した。その8か月後、両社は方向性の違いからパートナーシップを解消するに至ったが、これがインスタント・ケミストリーに幸運をもたらすことになった(他にもScientific Match やSense2LoveといったDNAを利用した恋人仲介サイトはあったが、どちらも今は廃業している)。SINGLDOUTとのコラボレーションによりインスタント・ケミストリーがメディアの注目を集めていたとき、ゴンザレスはカップルたちから「相性の良し悪しを測定するために遺伝子検査を受けることができるか」という問い合わせのメールをいくつか受け取っていた。

ゴンザレスは事業の方向性を転換。カップルを対象とした遺伝子検査を開発した。インスタント・ケミストリーは顧客に検査キットを送り、採取された唾液をカナダのトロントにあるISOの認証を取得した遺伝子研究所で分析する。

インスタント・ケミストリーのキットは、3つのHLA免疫系遺伝子と、行動に影響のある4つの遺伝子多様体(バリアント)を検査する。また、この検査は心理学的なアセスメントも含み、検査を通して自分のパートナーが意見の不一致にどう対処するか、またパートナーの支配欲や社交性、愛情行為がどんなものかを理解することができる。

それを裏付ける科学は非常に興味深い。例えばこれまでの研究から、人は免疫系が異なる相手により惹かれること、また、人はこの違いを無意識に体臭から判別することなどがわかっている。

「私たちの体臭は、皮膚の上のバクテリアによって決まります。誰かの臭いを嗅ぐことは、その人の免疫系がどう働いているかを嗅ぎ分けることになるのです。たとえ香水やコロンで体臭をごまかしても、誰かとキスをしたら、人間は間接的にその人の免疫系遺伝子を察知しています」とゴンザレスは言う。

インスタント・ケミストリーのウェブサイトによれば、パートナーと自分の免疫系が違えば違うほど、お互いがより魅力的に映るという。
「違いが大きいほど良いというものではありません。最適な違いというのがあります。この最適な違いの範囲を出てしまうと、相性の良い相手とは言えません」

ドーパミンやセロトニン、オキシトシンといった遺伝子多様体(バリアント)も検査対象となる。「これらの遺伝子は脳内の神経伝達物質です。これらから行動パターンに関する多くの情報を得ることができます」とゴンザレスは説明する。例えばセロトニンのトランスポーター遺伝子が長い人は、ストレスへの耐性が強い。カリフォルニア大学バークレー校で行われた研究によると、どちらも短い遺伝子多様体をもつ夫婦は、結婚に対する満足度が低下する傾向にあるという。

別の例としては、ドーパミンD4受容体が挙げられる。この受容体には7R+と7R-という2種類があるが「7R+をもつ人は、大胆でリスクをいとわずより恋人にふさわしいが、晩婚傾向にある」とゴンザレスは話す。

ゴンザレスは最終的にはインスタント・ケミストリーを恋人紹介のサービスに進化させてようと計画している。顧客がDNAテストを受けた後、それぞれのプロフィールにデータをアップし、データベース上にある他の人たちとの相性スコアを見ることができるというシナリオだ。遺伝子検査にはコストも時間もがかかるが、ゴンザレスはその場で結果が分かる簡易なキットを試作中だ。

「出会い系サイトのように適当な恋人候補を紹介するのではなく、本当に相性の良い相手と出会えるサービスにしたい。また、ミスマッチな相手との無駄な時間を省き、お互いを早く見つける手助けをするツールとしても可能性を感じます」とゴンザレスは話す。

文=マギー・チャン(Forbes)/ 編集=上田裕資

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