米百貨店大手メイシーズは、昨年の減収減益を受け、全米で36店舗を閉鎖し大幅な人員整理を実施する。アパレル大手、GAPは北米で175の店舗を、米ドラッグストアチェーン、ウォルグリーンは200店舗を閉鎖する予定だ。百貨店大手 J.C. ペニーも年内に7カ所のショッピングモール店舗を閉鎖する方針を明らかにした。
企業の経営状態を分析し格付け情報を提供する米ラピッド・レーティングスによると、店舗数削減に取り組む小売業者の中で最も危険な状態にあるのがJ.C. ペニーだ。
ラピッド・レーティングスは、米SEC(証券取引委員会)提出書類等の情報をもとに、利益性からキャッシュフローまで62のデータ要素から、小売部門各社の事業効率と財務状況を評価した。
その結果、J.C. ペニーは、事業効率が最も低い小売りチェーン5社のうちの一社とされ、100点満点を基準とする同格付け会社は、「ハイリスク」と判断している。
「J.C. ペニーは、現状を打開するために何としても必要だった昨年末ホリデー商戦の売上について、売上の伸びは好調で、既存店ベースの売上がプラスと発表したばかりです。しかし、モールに店舗をもつ他の大型小売チェーンの例にもれず、寒い中店舗に足を運んでもらうために小売値も相当下げざるを得ませんでした」と、ラピッド・レーティングスのジェームズ・ゲラートCEOは言う。
ラピッド・レーティングスのデータによると、2016年に経営破たんの危機に直面しているのは、かつて全米のティーンエイジャーに大人気だった衣料品小売りチェーン、エアロポステールで、同社の株価は昨年90%以上も大暴落している。若者たちがファストファッション大手フォーエバー21や、H&Mといった低価格ながらファッショナブルなブランドに流れ、ロゴだけが売りだった同社の商品は、若者から見向きもされなくなって久しい。
更に困窮しているのが、サーファーをイメージしたアパレルチェーン、パックサンだ。人気モデル、ケンダルとカイリ―のジェンナー姉妹をコラボさせてジェネレーションZ(1992~2010年生まれのSNS世代)にアピールしようと必死の策を講じたが、昨年9月には株価が最安値まで暴落。同時期に競合相手のサーフブランド、米クイックシルバーが倒産している。
カジュアル衣料チェーンJ.Crewと、アメリカン・アパレルの2社も苦境にあえいでいる。J.Crewは、2015年の第3四半期に既存店ベース売上が11%下落。ミッキー・ドレクスラーCEOは「2015年は、子会社メイドウェルの業績の伸びも虚しく、弊社にとっては非常に厳しい試練の年になった」とコメントした。
2016年に最も「ハイリスク」な小売業者はアメリカン・アパレルだ。同社は5年連続の売上減を受け、昨年新たにポーラ・シュナイダーをCEOに迎え、危機から脱する試みを行ってきた。同社は、昨年秋、Chapter 11(連邦破産法11条、日本の民事再生法に相当)の適用を申請し、債権団から9000万ドルの融資を受け事業を継続しつつ財政再建に取り組んで来たが、先日、債務者が会社再建に向けた再建案を既に承認したことを発表した。
また、同日、投資家のグループが3億ドルの資金を投入して、ロサンゼルスでスタートした「アメリカ製」を信条とする同社の買収に出た。従業員へのセクハラに対する訴訟で一度はCEOの座を追われていた創業者のダブ・チャーニー氏が経営の指揮を執ることが買収の絶対条件とされている。
アメリカン・アパレルは、ラピッド・レーティングスの0から100のスケールで(債務不履行の90%を40ポイント以下のレーティングを与えられた会社が起こしている)、15ポイントと格付けされたが、その主な要因は経営者問題ではなく、増え続ける損失だ。2015年第3四半期には、1880万ドル(約22億円)という巨額の損失を出し、売上は前年比19%減の1億2610万ドル(約148億4000万円)だった。