「アバクロ」の略称で知られる米アパレルブランド「アバクロンビー&フィッチ」(A&F)は、同社の悪名高き「販売員を外見で採用する」ポリシーの廃止を発表した。
新社長のクリストス・アンジェリデス氏は、各支店長に宛てた手紙の中で、「我が社は今後、体格や身体的特徴に関する差別に一切反対し、雇用法に反する差別的行為を容認しない」と述べた。
A&Fと関連会社の「ホリスター」では、これまで自社の店員を「モデル」と呼んでいたが、今後は「ブランド販売員(brand representatives)」と呼ぶことになった。また、従業員の「ドレスコード」の撤廃も決めた。
A&F従業員の「外見規定」はこれまでにも様々な物議を醸してきた。オクラホマ州タルサの店舗では、従業員に応募した女性イスラム教徒に対し、着用していたスカーフが採用基準に反するとの理由で雇用しなかった。この女性は今年2月、最高裁に告訴した。
今回発表されたA&Fの新ポリシーでは、店員がタトゥーを露出して勤務することを引き続き認めておらず、顔ピアスも禁止している。一方、これまでと大きく違うのが「身体障害者と特定の宗教を信仰する従業員に対する扱い」で、同社ではこれらに該当する社員が快適に仕事をできる環境作りを目指すとしている。
これまでA&Fのショッピング・バッグや広告には、腹筋の割れた、マッチョな男性の写真が必ずと言っていいほど掲載されていた。新店舗のオープンイベントでは、トップレスの男性モデルを起用してきたが、これも徐々に廃止するという。
声明の中で同社は「性的アピールを感じさせるマーケティングを今年7月末までに中止する」と述べた。
A&Fは前CEOのマイク・ジェフリーズ(昨年12月に辞任)の指揮下で、11四半期連続で売上が低下。ジェフリーズの性差別的商法に対しては、投資家らの反発も強く、同社役員会は昨年1月の時点で、同氏を会長の座から追放していた。
ジェフリーズに対する批判の高まりは、ブログやソーシャルメディアの発達によるところも大きい。2006年当時のインタビューでジェフリーズは「うちのブランドは痩せて、見た目の良い人々だけに着てほしい」と発言していたが、これが2013年になってネットメディアに取り上げられ、SNS上で大炎上する事態に発展したのだ。
A&Fはここ最近、H&Mやフォーエバー21などに奪われた顧客を、なんとか呼び戻そうと奮闘している。会社の舵取りを任せる新たなCEOの募集も開始したという。