ビジネス

2015.06.23

ZARAの従業員「人種差別」問題 40億円訴訟に発展

オーストラリア シドニーのZARAショップ(Image: Wikipedia)



昨年8月、スペインに本社をおくアパレルブランドZARAは、胸に黄色の星形が付いた子供向けシャツを販売したが、このデザインがユダヤ人が強制収容所で着用した服を思わせるとして批判を招き、商品を撤去する騒動に発展した。ZARAは2007年にも、デザインの一部にハーケンクロイツ(鉤十字)が含まれるハンドバッグを販売し、やはりそれらを即刻回収している。

一連のトラブルに続き、ZARAで元社内弁護士を務めていた人物が、同社の「企業風土に反ユダヤ主義が含まれる」として、このファストファッションの巨大企業を相手取り訴訟を起こしている。

ZARAで北米、カナダ担当の社内弁護士だったイアン・ジャック・ミラーの弁護人は6月3日、「ミラー氏はユダヤ系アメリカ人であることと、同性愛者であることを理由に差別を受け、不当解雇された」として同社に4,000万ドル(約49億円)の賠償を求め、ニューヨーク州最高裁に訴訟を申し立てた。

訴訟内容を見ると、インディテックスの創業者で世界長者番付け4位とされるアマンシオ・オルテガ氏自身が、かなり問題のある人物であることがうかがえる。

訴状によると、「オルテガ氏の肝いりの部下が、ミラー氏に対し同性愛者のポルノ画像を送り付けたり、女性部下への性的搾取を誇らしげに語るといった猥褻な内容のメールを送った」という。

また、申し立て書には「ZARAの幹部クラス社員らは、オバマ大統領夫人のミシェル・オバマがフライドチキンを給仕する様子や、オバマ大統領がアメリカの白人至上主義団体KKKの装束を被って南部連合国旗を掲げた姿などを、朝食用ボリッジミックスの箱にコラージュした画像などを、社内メールでやりとりしていた」と記載されている。

さらに、オルテガ氏の側近とされる幹部社員は日常的に、チェーン店舗のユダヤ系アメリカ人の家主らを、ユダヤ人を蔑称する呼び名で呼んでいたという。入社当時のミラー氏はZARA社内の反ユダヤ的風潮を目の当たりにし、自らのバックグラウンドを隠していた。

だが、ミラー氏がユダヤ系であることがニューヨークの幹部に知れた途端、彼は標的にされ、あらゆることから意図的に排除された挙句、7年間務めた会社を解雇された。

ミラー氏が解雇を告げられたのは、ZARAがソーホー地区にオープンする店舗の買収に絡む法的手続きを彼がやり終えたばかりのタイミングだったという。

ミラーの主任弁護士デヴィッド・サンフォードは「ミラー氏は、ZARAでは招かれざる人種だったということです」とコメントした。劣悪な労働環境や、賃金差別、差別的な不当解雇といった理由で、ミラー氏はインディテックス社に対し4,000万ドルを超える賠償金を求めている。

ZARA USA はその後、下記のようなコメントを発表した。

「ZARA USAは、世界88ヶ国に多種多様な国籍、文化、言語、宗教的背景をもつ14万人の社員を抱える世界有数の規模を誇るアパレル流通グループの傘下にあり、それ自体が多文化と多様性に富む企業です。訴訟の原文はまだ目にしていませんが、本日発表されたこの度の訴訟に関するプレスリリースの内容は、我々にとって非常にショッキングなものであり、我が社としては、申し立てのひとつひとつを精査し、法的な対応をとっていく所存です。当社としても、差別的で人を冒涜する振る舞いは看過できません。当社は社員ひとりひとりが、ダイナミックな環境でそれぞれの力を発揮できる企業を目指しています」

文=クレア・オコナー( Forbes)/ 編集=上田裕資

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