専門のツアー会社の手にかかれば、ぬいぐるみたちは海外へ出て、観光や食事、その他いろいろなアクティビティに参加し、その大冒険を収めた写真とともに無事に帰ってくることができるのだ。
「大切なぬいぐるみを名所へご案内します」と言うのは東京に本社を置くウナギトラベルの東さん。東京観光をはじめ、鎌倉や箱根の温泉リゾート、時にはハワイや沖縄までツアーを企画する。「すべてのツアーで地元の逸品を味わっていただけます」というが、ぬいぐるみはもちろん食べるふりをするだけだ。ツアーの間中、東さんはぬいぐるみのベストショットを撮り続ける。それらの写真は同社のFacebookにアップされるので、家族は旅行中の動向を追うことができる。そして帰宅とともに、写真のCD-ROMも受け取れる。
2010年にスタートしたウナギトラベルは、これまで220以上のツアーを催行してきた。ツアーに参加するのは平均6つのぬいぐるみ。料金はミステリーツアーが35ドル(約4,200円)、沖縄ツアーが120ドル(約14,600円)など様々だ。
一方フランスでは、ペルーチェトラベルがパリ近郊でツアーを主催している。ペルーチェはフランス語でぬいぐるみの意味。Sabine Passelegueさんが、娘のぬいぐるみをウナギトラベルに参加させたことをきっかけに設立した。今そのぬいぐるみは出世し、同社のガイドとして活躍している。ノートルダム大聖堂の観光やワイナリー巡り、全仏オープン観戦など多彩なツアーがあり、料金は50〜90ユーロ(約6,600〜11,800円)。
ペルーチェトラベルに並々ならぬ情熱を注ぐPasselegueさんは「ツアーを通じて名所を訪れたり料理をしたり、思いがけない週末を過ごすことで家族で人生を分かち合い、フランスらしい生活を発見できる」と魅力を語る。さらに、ぬいぐるみが帰りにお土産を買って帰るという粋な計らいもある。ウナギトラベル同様にFacebookで写真をアップし、CD-ROMにもまとめてくれる。
しかし、そもそもの疑問は「なぜ人はぬいぐるみに旅行をさせようと思うか?」だ。それについて東さんは「遊び心という人もいれば、教育的な目的という人もいます。私が始めたきっかけは、障害や入院などで身体の不自由な人、忙しすぎて出かけられない人に冒険する機会を提供したいと思ったからです」とコメント。さらに、ニューメキシコの小学校の先生からマスコットを送られてきた経験を振り返り「これでクラスのみんなが世界について学び、インスピレーションを受けることができるのです」と語ってくれた。