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2015.12.30 06:50

ザッカーバーグ夫妻の寄付組織が慈善団体ではない理由

Pool / Getty Images

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12月1日、フェイスブック創業者マーク・ザッカーバーグによる寄付の桁外れな大きさがメディアを賑わせた。ザッカーバーグが、保有するフェイスブック株の99%(現在の価値で450億ドル(約5.5兆円)に相当)を生涯に渡って寄付すると発表したのだ。

これに対していくつかの疑問が浮かび、一部のメディアからは批判が噴出した。ザッカーバーグの節税対策に過ぎないのではないかという声も上がった。

それに答える形で、ザッカーバーグは自分と妻が作ろうとしている少々珍しい組織形態について、フェイスブック上で説明した。2人がつくるのはチャン・ザッカーバーグ・イニシアチブLLC。LLCは有限責任会社である。この組織を通じて、ザッカーバーグと妻のプリシラ・チャンは、非営利組織に対して助成金を拠出するだけでなく、より幅広い取り組みを行う予定だという。「従来型の財団ではなくLLCという形をとることで、チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブに株式を譲渡することによる税制上のメリットはなくなります。しかし、私たちが自分たちの使命だと考えることを、より効果的に果たすために必要な柔軟性を手に入れることができるのです」とザッカーバーグは書いた。

LLCという形態をとることにより、非営利団体への資金提供に加え、夫妻は(営利企業を含む)私企業への投資や、政策論争、つまりロビー活動も行うことが可能になる。

これまでにも同様の手法を使った億万長者がいないことはない。中でも有名なのは、eBay創業者のピエール・オミダイアで、自身のオミダイア・ネットワーク経由で営利組織への投資と非営利組織への寄付の双方を行っている。オミダイアは2011年のハーバード・ビジネス・レビューへの寄稿内で、この複合機能組織に言及している。記事中でオミダイアは、ネットワークの発足当初は「インパクト投資」という概念があまり知られていなかったが、オミダイアが行ってきたことは、営利企業へのインパクト投資であったとした。尚、インパクト投資とは、投資収益を求めるだけでなく、社会問題や環境問題の解決を目的とする投資を指す。

実は、ザッカーバーグは既に非営利組織への寄付とインパクト投資の中間のようなことや、社会的な目的をもつ営利企業への投資を行っている。フェイスブックで、チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブのタイムライン上に公表されているイベントを見ると、今年5月にはテクノロジーを利用した新しい教育システムを展開するアルトスクールに1500万ドル、3月にはアフリカ諸国にいくつかの学校を持つブリッジ・インターナショナル・アカデミーズに1,000万ドルを投資していることがわかる。

資産管理会社CTC MyCFOの慈善活動サービス担当ディレクターであり、遺産や信託を扱う弁護士経験もあるスザンナ・プーンは、ザッカーバーグが2014年8月には、デラウェア州でザッカーバーグ・エジュケーション・ベンチャーズという組織をつくっていたことを明かした。そして、この組織を通してアルトスクールをはじめとする非営利の教育関連企業への投資を行ったのではないか、とした。(同組織には投資内容を公表する義務はない)。

また、プーンは、財団ではなくLLCという形態をとるメリットについて、慈善団体はできないロビー活動や政治献金もLLCでは可能となることを挙げた。更に、LLCの場合は最高幹部5名の報酬について公表する義務がない。一方、慈善団体の場合は公文書に該当する納税申告書でこれを報告する義務がある。

プーンは、慈善団体が企業の株式の10%以上を所有することができないことも指摘した。LLCであれば、ザッカーバーグはフェイスブック株式の10%をチャン・ザッカーバーグ・イニシアチブに移すこともできるということだ。

また、LLCであればザッカーバーグはチャン・ザッカーバーグ・イニシアチブが所有するフェイスブック株についても権利を行使することができるが、財団に寄付した場合はできなくなる、とした。

「ザッカーバーグ夫妻が取り組みたいと考える問題を解決していくための、総体的なアプローチなのです」とプーンは付け加えた。「非課税で非営利組織に寄付を行うということに限定されていない枠組みを選択したということです」

フェイスブック上に、チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブのページを設けることで、ザッカーバーグは、自分が寄付する資金の流れについて透明性を持たせようとしているようだ。そこには既に相当数の投資や寄付案件が記されている。そして、その数は今後もどんどん増えていくのだろう。

編集 = Forbes JAPAN 編集部

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