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モバイル業界のアジテーターとイノベーターに関する記事をカバー

Nejron Photo / shutterstock

結婚を控えたカップルが自宅でスマホ片手にくつろぎながら、宝飾店の店員を交えてグループチャットを行う−−。ダイヤモンド指輪のオーダーメイドの世界で今、そんな光景が現実のものとなっている。

ロンドンを拠点にオーダーメイドの指輪を販売するスタートアップRare Pinkは、2015年初頭より顧客とのコミュニケーションにWhatsAppを活用してきた。同社の顧客の約1割が婚約指輪に関する相談をWhatsAppで行っている。

彼らの多くは男性であり、職場では私用の電話やメールを禁じられている。また、パートナーに秘密で計画を進めている人は、PCの閲覧履歴からサプライズが台無しになることを防ぎたい。Rare Pinkの共同創業者でCEOのニコライ・ピリアンコブは「私たちの顧客の大半は、こっそり指輪を買いたい男性です」と言う。

Rare Pinkの指輪の平均価格は4,500ドル(約55万5,000円)。顧客は数週間にわたってスタッフのコンサルティングを受けられる。ピリアンコブによると、指輪のデザインからダイヤモンドの選定、値段の交渉まで、支払いを除くすべてのプロセスをWhatsAppで行う顧客も少なくないという。

近年、多くの大手メッセンジャーアプリは多機能化に力を入れている。ショッピング、ゲーム、ブランドボット(企業の自動化されたアカウントとユーザーが直接会話するようにチャットする機能)、カーシェアリングなどサービス展開の幅は広がる一方だ。そんな中、WhatsAppはシンプルなメッセージ機能に特化することで急成長してきた。月間アクティブユーザー数はもうすぐ10億人に届く勢いだ。

現在Rare Pinkでは、ピリアンコブが所持する顧客対応専用のスマホをセールス担当者3名のPCと接続し、顧客とコミュニケーションを取っている。2015年1月、ブラウザ上でもメッセージを送受信できるWhatsAppのウェブ版がリリースされたことで、この体制が実現した。

Rare Pink は一方で、顧客の約15%を占める中国人に対しては中国のメッセンジャーアプリWeChatを使っている。中国の男性はフィアンセと一緒に買い物することが多く、また家族や友人の意見を募ることもあるため、よりオープンなWeChatのフォーマットが適しているという。

「メッセージアプリを使った顧客対応はアジアのほうが進んでいます」とピリアンコブは話す。彼は最近、上海の競合店を訪れた際、iPadを持った店員に接客され、WeChatのアカウントを尋ねられた。店を出ると、さっそく宣伝メッセージが舞い込んだ。

Rare Pinkの顧客アプローチは、この上海の店の売り込み方法とは対照的だ。WhatsAppを通した同社の営業方針は「パーミッション(許可)・マーケティング」だ。「私たちは顧客の承認をもらってからアプローチするのです」

ピリアンコブの考え方は、WhatsApp創業者たちの方針にも一部通じる。WhatsAppはアプリに広告を掲載しないことを表明しており、その理由については「広告が載った時点でユーザーが商品になるから」と説明している。

2015年2月、同社がFacebookに220億ドル(約2兆7,120億円)で買収された後も、この広告に関する方針は変わっていない。共同創業者のジャン・コウムによると、Facebookはこの2、3年の間はWhatsAppで儲けるつもりはないという。

他方でWhatsAppは同社のアプリを商用目的で使うことは許可している。昨年、フォーブスがコウムにインタビューを行った時点で、インドをはじめとするアジア諸国の小規模企業がWhatsApp経由で顧客の注文を受けていた。

企業が顧客にものを売るための営業ツールではあるが、広告そのものを送りつけているわけではない−−。今後、このような用途に対してWhatsAppが課金する可能性はあるのだろうか? 少なくともユーザーであるピリアンコブは、何らかの料金を払うことに異論はない。仮にWhatsAppに支払い機能が加わり、Rare Pinkが信頼できるショップであることを示す認証が発行されるなら、月額100ドル程度を払ってもいいと考えている。さらに単一のアカウントで複数の顧客と同時にチャットできる機能があれば申し分ないとピリアンコブは言う。

「婚約指輪選びは非常にプライベートな買い物です。店員からのプレッシャーを感じずに選びたい人が多いはず。直接対面しないで済むWhatsAppの距離感がちょうどいいのでしょう」

編集=海田恭子

 

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