株式相場が雇用統計に呼応した際、債券、金利敏感セクター、証券発行者は11月7日、売りの行動に出た。その結果、iシェアーズ米国国債20超ETF (TLT) は1.5%の下落を示し、Utilities SPDR ETF (XLU) では3.5%の下落、Vanguard REIT Index Fund ETF (VNQ)では3.1%、iShares Select Dividend ETF(DVY)では1.3%とそれぞれ下落を示した。ベンチマーク SPDR S&P 500 ETF (SPY) は0.05%下落で取引を終えたが、SPDR Dow Jones Industrial Average ETF (DIA) は0.28%の上昇だった。
さて、このような利上げ環境の中で投資家はどうすれば収益を最大にして、リスクを最小にできるのだろうか?ファイナンシャル・アドバイザーからは以下のような助言が発せられている。
1.バケットで対応
ニュージャージー州サミットにあり、1億2,000万ドル運用のSummit Place Financial Advisors社長のリズ・ミラー氏は、ポートフォリオは3つのバケットに分割すべきと主張する。
リズ・ミラー氏の意見はこうだ。「収益を最大にして、リスクを最小にすることは夢のような話です。どんなに用意周到に選んで、絶対に儲かると思った商品でさえも惨めな結果を生んでしまいます。低利率の環境では、守るべきポートフォリオと好調を維持できるような投資先について熟慮する必要があります」。
リズ・ミラー氏が言うところの「3つのバケット」は以下のとおり。
1. 市場のバケット 市場動向に左右される株式、ファンド、投資商品(高利回り債券など)。
2. 保護のバケット 好調で低リスクの債券。これらの投資は確かに収益性の観点からすると物足りないが、顧客ポートフォリオをしっかり守ってくれるのが長所と言える。
3. 収益のバケット このバケットは、投資で儲けたいと思う顧客向けのもの。大半のポートフォリオ保有者は、収益を維持するに当たりトータルリターンを確保するため、債券とキャピタルゲインを組みわせている。
真に儲けを確保したい投資家には、高配当の優良株が推奨される。株式配当にかかる税金は、債券よりも低いので、投資家にとっては有利なのだ。優良株はたとえば、AT&T (T)、Verizon (VZ)、Exxon Mobil (XOM)、Pfizer (PFE)、Procter & Gamble (PG)、Walmart (WMT)などが挙げられる。これらの銘柄は、優良10年物債券よりも高配当を出しており、今後もその傾向が強まりそうだ。
さらには、「優良企業」の社債が推奨される。ただし、これらの社債は満期までが長いのが通常だ。経済のファンダメンタルズが変動しても、また金利が上昇しても、これらの社債は高利回りを生み、売却もできるなど迅速な対応がとれるという安全性が優れている。このような銘柄としては、Duke Energy (DUK) やPrudential (PRU)が推奨される。
2.クローズドエンド型投資信託を検討材料に
ニューヨーク州メルヴィルにあり、顧客資産10億ドルを運用するLantern Investments社長のキース・ラントン氏は、クローズドエンド型投資信託を推奨している。同社の信託では、純資産総額(NAV)を大幅にディスカウントして取引を行っているそうだ。(NAV は総資産額からファンド負債を差し引きいたものを株式総数で除した金額)クローズドエンド型投資信託は、固定株式総数で取引されるが通常で、それらの株価は、株式市場の需給バランスによる変動を受ける。通常の投資信託と異なる点は、クローズドエンド型投資信託の場合、儲けを期待して資産を最大限活用するため、社債または優先株を発行できるところという。
ラントン氏は、クローズドエンド型投資信託の場合、満期が5年、10年、15年の3種類を推奨している。株主は、満期日に投資信託全額を受け取ることとなる。
3.長期の投資適格社債を組み込む
23億ドルを運用するColumbia Strategic Income Fund (COSIX)のポートフォリオ・マネージャー、ジーン・タンナーゾ氏は、長期の投資適格社債の買いを勧める。
タンナーゾ氏は、「用心深い投資家は、長期債券投資には腰が引け気味だが、長期の、それも投資適格社債であれば、今日の投資環境にあっては魅力ありとします。優良企業の場合ですと、利回りが5%近くにもなります。このような利回りを有する社債は魅力ある投資であるばかりでなく、長期利回りが下落し(その結果、社債価格が高騰する)、景気が悪化するようなことがあっても、防御機能を果たしてくれるのです」と説明する。
このようなカテゴリーに相当する ETF最大銘柄は、iShares 10+ Year Credit Bond ETF (CLY)、Long-Term Corporate Bond Index Fund (VCLT)、SPDR Barclays Capital Long Term Corporate Bond ETF (LWC)など。これらの銘柄の収益率の幅は4.4%から4.6%となっている。
4. オルタナティブ投資を選択肢に
株式またはETFでは売りのカバード・コールを、と強調するのはニューヨーク市で700万ドル資産を運用するExceed InvestmentsのCEO、ジョー・ハルパーン氏。契約期間終了前に権利行使価格で売主から株式を「コール」すなわち買う権利を買主に付与する契約がカバード・コールだ。
ハルパーン氏は、「売りのオプションで、株価に変動なし、または株主に有利、不利になった場合でもこのカバード・コールなら収益を上げる確率は非常に高いです。ただ、問題なのは、市場で予期しない市場変動、たとえば、この8月末に起きたような変動があるとプラス収益は到底見込めなくなってきます」と説明する。
推奨されるETF銘柄は、収益率9%のRecon Capital NASDAQ 100 Covered Call ETF (QYLD)と収益率10%のUS Equity High Volatility Put Write ETF (HVPW)の2つという。
5.マスター・リミテッド・パートナーシップの活用
マスター・リミテッド・パートナーとは、原油、天然ガスの運送、保管、処理の手数料収入をビジネスとする企業のことだ。コネチカット州ウェストポートにあり、7億5,000万ドル資産を運用するRDM Financial Groupの社長兼CEO、ロン・ワイナー氏は、3年から5年のスパンで投資をする人にはマスター・リミテッド・パートナー (MLP)を推奨している。
ワイナー氏は、「ほとんどの場合、MLPは長期契約となります。これまでMLPの配当金のアップ率はインフレ率よりも速かったのです。また、大半のMLPは基礎エネルギー価格に対してのエクスポージャが少ないのが現状です。税金では優遇措置を受けていましたが、それも近年、解除の圧力がかけられていました。これらの企業では、たとえ株価が下がっても、配当金を大幅に上げ続けています。これはとりもなおさず、これら企業の経営陣の経営に対する姿勢がポジティブであることの証明で、「強気」のサインとみてよいでしょう」と語りました。
人気の高いMLP ETFは、ALPS Alerian MLP ETF (AMLP)で8.51%の収益率を上げている。ただし、警戒をしなくてはならないのが経費率で5.43%もある。JP Morgan Alerian MLP Index ETN (AMJ) の収益率は7%で、経費率は0.85%となっている。経費の中には借入金があり、それをこれらの企業が適正に支払うかどうか、投資家は企業の誠実さを信用するしかないのが現状だ。
タダのメシなどありえない
もちろん、投資とか株式市場に関して言えば、タダのメシなどありえない、という表現が当てはまる。収益をより多く得たければ、より多くのリスクを覚悟しなければならない。
ロードアイランド州スミスフィールドにあるブライアント大学ファイナンス学部教授で学部長のピーター・ニグロ氏は、「投資家は、多くの収益を得たいと思うなら、自らのリスク選好度を承知し、リスクについて理解を深めることが重要」と述べ、続いて、「債券投資の場合、金利リスク、信用リスク、市場リスクのほかにも流動性リスクが介在し、これらのリスクは緊張が高まると肥大化していくものなのです」と主張する。
投資は、いつ別れるかもしれないリスクを負う男女の関係と同じようなものかもしれない。うまくいけば、それはそれでとてもハッピーになれるのである。