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I write about building sustainable brands

Leena Robinson / Shutterstock.com

アメリカでは、11月上旬からスターバックスの赤いカップが「クリスマスを巡る論争」の的になっている。今年登場したクリスマスシーズン用のカップからクリスマスらしい絵柄が消えたのは、スターバックスがキリスト教から距離をおこうとする意志の現れだと言う人たちが現れたのだ。この主張への賛否はさておき、ひとつ明らかになったことがある。スターバックスのカップが、クリスマスを象徴する文化的なアイコンとみなされるまでの存在に上り詰めている、ということだ。通常、ブランドビジネスにおいては、こうしたブランド連想(brand association)は非常に好ましい現象とされるが、今回のように強力に文化的なシンボルの域に達すると、それに付随する責任も生じてくる。望もうと望まざると、情報の受け手が勝手に作り出した期待に応えなければいけなくなるのだ。

今回のスターバックスに関する一連の報道を見ていると、同社が突然カップのデザインから「メリークリスマス」の文字を消したかのように感じる人も多いだろう。しかし、実際のところ、スターバックスは、これまで一度も明確にキリスト教に結び付けられるような文言をデザインに入れたことはない。受け手側の心に残る印象と現実には乖離があるのだ。ブランドマネジャーたちの間では、ブランドというものは何百という印象の積み重ねによって構築されるもので、マーケティング担当やPRチームがそれを簡単にコントロールできないことは常識だ。今回の一件でも、実際に「クリスマス」という言葉がカップに刷られたことは一度もなくても、クリスマスを愛する顧客にとってスターバックスの赤いカップがすっかりクリスマスのアイコンと化してしまったことにより、カップがクリスマスと結び付けて認識されるという状況が発生している。

では、このように自社ブランドと結び付ける印象をすべてコントロールすることなどできない中で、顧客側の誤解により「クリスマスを巡るスターバックス論争」のような事態が発生した場合、どうしたらよいのか。まずは、顧客の生活の中で、こういった文化的な価値がどのような存在なのかをしっかりと認識することが重要となる。ブランドコンサルティング会社ニューハートランドよれば、信仰(宗教そのものではない)、コミュニティー、そして家族に対する基本的な価値観が消費者の購買行動に大きな影響を及ぼす、という。スターバックスの赤いカップを巡る論争は、非常に強い信仰を持っている人々がいて、その価値観が彼らの購買するブランド選択に大きな影響を与えるということをよく示している。

スターバックスは、成功を続けるために、いずれの宗教へもへつらう必要など全くない。しかし、信仰が消費者の生活の中で果たす役割を理解することは、今後そうした要因によるマイナスの影響を抑えるのに大いに役立つはずだ。強い信仰を持つ人たちが、クリスマスのシンボルとして赤いカップにそれだけの熱い思い入れを持ってくれているという事実は、スターバックスが築き上げたブランド力を象徴する称賛と捉えることもできる。しかし、同時に、自分たちがつくり出してしまった文化的アイコン(それが実際のところどの程度広く受け入れられているのかを問わず)に対する反発が起こりうることを認識し、対処に備える必要もあるのだ。今回の赤いカップ騒動では、消費者の側がスターバックスのブランド・ストーリーを語ってしまった形だ。ブランド側が明確なストーリーを描けていないと、他者がそれを語り始めてしまうのだ。そういう意味では、スターバックスが、クリスマスを愛する顧客にとって自社のカップがどれだけ大きな存在であるかをもっと明確に認識している必要があったといえる。政治的に正しく(politically correct)あることに極めて敏感な現代社会においては、文化的価値を認識するという単純なステップを忘れないことが、顧客との関係維持の大きなプラスとなるのだ。
 

編集 = Forbes JAPAN 編集部

 

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