アップルペイに対抗しサムスンが2月に買収したLoopPayがハッキング被害に遭った。10月7日、ニューヨーク・タイムズは「ハッカーらは今年3月にLoopPayのシステムに侵入した」と報道した。
この報道に対するサムスンの対応は早かった。同社のチーフ・プライバシ・オフィサーであるダーリーン・セドレスは10月7日、「サムスンペイに影響は無く、個人の支払い情報等には何の危険も及んでいない。LoopPayのネットワークはサムスンペイからは“物理的に隔離”されている」と述べた。
ハッカーらがサムスンのシステムやユーザーのデータに侵入した兆候は無い。しかし、中国に拠点を持つと思われるハッカーらは、LoopPayの磁気カード読み取りシステムMST(Magnetic Secure Transmission)に狙いを定め、その海賊版の作成を試みた可能性があるという。
MSTはクレジットカードの磁気ストライプを非接触で読み取ることが可能だ。その点で競合のアップルやグーグルの決済システムより優位に立っている。サムスンは今年3月にサムスンペイを発表。Galaxy S6やS6 Edge等の端末でMSTが利用可能になっている。
前出のサムスンのセドレスは「ハッカーらはLoopPayの企業ネットワークをターゲットにしていた。LoopPayのネットワークの問題は直ちに解決された。またサムスンペイとは何の関係もない」と述べている。
サムスンがサムスンペイに関する消費者の信頼を得ようとしている段階で、ハッカーらがLoopPayの決済システムに侵入できなかったことは、サムスンが大いにアピールしたいポイントだ。
今回の事件は、MSTがサムスンにとってどれほど重要な技術であるかを示している。現状では消費者らは、まだその価値に気づいていない。だからこそサムスンは、この事件が一刻も早く忘れ去られることを願っているのだ。