仏高級ブランド「エルメス」は17日、第1四半期に売上高が前年同期比7%増の41億ユーロ(約6600億円)に達したと発表した。米国のドナルド・トランプ大統領による関税の影響で経済の不確実性が増す中、スカーフからハンドバッグに至るまで幅広い製品を扱うエルメスは、今年も力強い成長を見込んでいる。
一方、億万長者のベルナール・アルノー会長が所有する仏高級ブランドグループ、LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンは先に前年同期比3%の売上減を発表し、株価が急落した。エルメスでは展開する部門の多くが堅調な伸びを見せ、両社の明暗が改めて浮き彫りになった。
家族経営を維持するエルメスは、「バーキン」や「ケリー」といった世界的に有名なバッグが数十年にわたって売れ続けている。同社の第1四半期の売上高全体の約72%を占めた2大主力部門である皮革製品・馬具部門と既製服・アクセサリー部門の売上高はそれぞれ前年同期比10%と同7.2%伸び、全体の成長を引き上げた。特に「メドール」と「ムスクトン」と名付けられた新作バッグへの需要が大きな原動力となった。
それより規模の小さい絹製品・繊維製品部門と、財務上は「その他」に分類される宝飾品や家庭用品を含む部門も成長傾向にあり、それぞれ前年同期比4.5%と同6.1%増加した。売上高が減少したのは、時計と香水・美容というエルメスの中で最小規模の部門のみで、それぞれ同10%と同0.5%縮小した。これらの部門が第1四半期の同社の売上高全体に占めた割合は5.8%だった。
地域別では、エルメスの最大の市場であるアジア太平洋地域(日本を除く)の売上が低迷したにもかかわらず、前年同期比1.2%の成長を遂げた。世界最大の伸びを示したのは日本で、同17%超の成長率を達成した。一方、米州の売上はアジア太平洋地域の次に振るわなかったものの、同11%伸びた。
エルメスのアクセル・デュマ会長は、今期の比較対象となる前期の業績が好調だったにもかかわらず、堅調な成長を維持したと評価。「地政学的・経済的状況が複雑化する中、当社はこれまで以上に基礎を強化している」と強調した。こうした基礎には、厳格な品質管理のほか、創造性をブランドの中心に据えることなどが含まれる。デュマ会長は、同社の垂直統合は「独自のノウハウを維持している証拠」でもあり、将来的にも追求されるべきものだと説明した。