3つのストライクでアウトになる野球のルールがダイヤモンドにも適用されるとしたら、ダイヤ業界はダグアウトに引き返し、業界のリーダーであるデビアスの売却計画は静かに棚上げされていただろう。
米国に輸入されるダイヤへの関税は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックで売上が激減し、安価な人工ダイヤに市場シェアを奪われ、すでに苦境にあるダイヤ業界にとって3つ目のストライクだ。
度重なる逆風で天然ダイヤ、つまり採掘されたダイヤの価格は暴落し、過去2年間で50%下がったと推定されている。
10年前には目新しかった人工ダイヤは、ロシアやボツワナなどで採掘されたものが1カラットあたり90ドル(約1万2800円)以上であるのに対し、同10ドル(約1420円)程度と、採掘されたものの何分の1かのコストで生産されている。
従来のダイヤ産業が圧迫されているため、デビアスの85%の株式を所有する英ロンドン証券取引所に上場している資源大手アングロ・アメリカンは、100年以上にわたってダイヤ市場を支配してきたデビアスの評価額を段階的に引き下げざるを得なくなっている。
アングロ・アメリカンは2012年にオッペンハイマー家が所有していたデビアスの株式40%を51億ドル(約7260億円)で取得した。その際、デビアスは127億5000万ドル(約1兆8150億円)と評価されたが、一連の評価額の引き下げにより(昨年は16億ドル=約2270億円の評価損を計上し、今年は年初に29億ドル=約4120億円の減損処理を行った)、ボツワナ政府が15%を所有するデビアスの評価額は約25億ドル(約3550億円)まで下がっている。
赤字に転落
人工ダイヤとの競争とコスト上昇が重なり、デビアスの利益は2023年に7200万ドル(約103億円)だったが、昨年は2500万ドル(約35億6000万円)の赤字に転落した。