Forbes JAPAN本誌で連載中の『美酒のある風景』。今回は4月号(2月25日発売)より、「山崎12年」。フルーティな味わいの1本だ。
先日バーで隣り合った外国人客が「日本でジャパニーズ・ウイスキーを味わうのを楽しみにやってきた」とバーテンダーに語っているのを小耳にはさんだ。「山崎」、「響」、「白州」など国産のウイスキーの人気が世界的に上がり、原酒不足から品薄になっているのは周知の通り。だが、そのきっかけは? と問われたら、明確に答えられる人は意外に少ないかもしれない。
きっかけのひとつに、2000年代前半に始まり今に続くハイボールブームが影響しているだろう。次に、糖質制限ダイエットの流行から糖質ゼロの蒸留酒であるウイスキーが脚光を浴びた、という点も挙げられるかもしれない。しかし世界的な人気の起爆剤となったのはなんといっても、13年に「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことだ。これを機に、世界各国に和食、なかでも寿司店が爆発的に増えた。食材の味を大切にする和食に触れる機会が増えたことで、同時にやはり繊細で複雑な味わいのジャパニーズ・ウイスキーの魅力に世界が気づいた……という経緯だと推察している。
そもそもジャパニーズ・ウイスキーは「サントリー」創業者である鳥井信治郎の「日本人の繊細な味覚にあった、 日本のウイスキーをつくりたい」という熱い想いから、1923年に着工した山崎蒸溜所(大阪)で始まった。山崎の地は万葉の昔から名水の里として名高く、桂川、宇治川、木津川の三川が合流する気候条件もウイスキーの熟成に好適。まさにウイスキーづくりの理想郷であったという。
その山崎蒸溜所のモルト原酒のみでつくられたシングルモルトウイスキー「山崎」は先 1984年に誕生。シグネチャーともいえる「山崎12年」は昨年、世界的な酒類コンペティション「ISC」において全部門での最高賞「シュプリーム チャンピオン スピリット」を受賞した。国産ウイスキーが生まれてから約100年……「山崎」が世界を制した様を鳥井信治郎が見たらなんとコメントしただろうかと想像するのも楽しい。
この「山崎12年」は「うなぎともよくあいます」と教えてくれたのは「KATO’s DINING& BAR」(東京・紀尾井町)の安西雄太料理長だ。香ばしいタレとうなぎの脂が「山崎12年」のフルーティな味わいとよくマッチする、好ペアリング……そういえばうなぎも海外消費の拡大から枯渇気味であった。日本の名物が世界へ知られるのはうれしいが、我々の手の届かなくなるのはさびしい、少々複雑な心境である。
山崎12年

容 量|700ml
度 数|43%
価 格|15000円
問い合わせ|サントリーお客様センター 0120-139-310(平日9:30~17:00)
今宵の一杯はここで
KATO’s DINING&BAR
老若男女に支持される和食ダイニング&バー


「ホテルニューオータニ」のロビー階、といっても南端に位置しているので、喧騒とは無縁で落ち着いた雰囲気のダイニング&バー。個室を含む全94席の店内は広々としており、ビジネス・私用両面でのさまざまな会食に対応してくれるほか、カウンターで酒肴をつまみながら1杯……と多様に使えるのが魅力。人気はうなぎのほか、幻の和牛といわれる「尾崎牛」を贅沢に使用した牛丼も。

住所/東京都千代田区紀尾井町4-1 ホテルニューオータニ ガーデンコート ロビィ階
電話/03-3221-2857
営業時間/11:30~15:00、17:00~22:00(土日祝11:30~22:00)
休/なし