Vidarのシステムはウクライナによる突然の飛躍というようなものではない。ドローンの探知という分野で、似たようなシステムが進化してきたのをわたしたちは知っている。具体的に言えば、「Zvook(ズブーク、ウクライナ語で「音」)」と「Sky Fortress(スカイ・フォートレス)」は、ネットワーク化された多数のマイクを通じてドローンの特徴的なエンジン音を拾っている。ウクライナ各地のポールに取り付けられたマイク6000個などで構成されるSky Fortressは非常に有効で、国内に侵入してくるドローンのほとんどを捕捉し、その位置情報を12秒以内にデルタに送信できると言われる。
砲身を狙うドローン
歴史的には、対砲兵射撃は大砲によって行われ、「砲兵の決闘」、つまり砲兵戦が繰り広げられてきた。しかし現在、ウクライナの戦場では、最大の大砲キラーは小型ドローンになっているようだ。砲手を殺傷するのは容易でも、大砲自体を撃破するのは難しい。爆風や破片では、硬くて大きな金属の塊である大砲にはほとんどダメージを与えられない。
だがウクライナ軍は、成形炸薬弾頭を搭載したドローンで砲身を狙う技術を完成させている。砲身に直撃を受ければ大砲は使用不能になる。そして、ロシアの新たな砲身の生産能力は非常に限られているので、そのダメージは永続的なものになる傾向にある。
音響探知による位置情報の精度は砲兵射撃にとっては不十分かもしれないが、周辺を捜索して照準を合わせることができるFPVドローンにとっては十分すぎるほどだ。
ウクライナ軍のドローン部隊「マジャールの鳥」の最新月次報告によると、ロシア軍の大砲の砲身を至近距離から19回攻撃したとのことだ。砲身は自動攻撃システムには容易な目標だろうが、これらの攻撃はなお人間の操縦で行われているようだ。
さらに、ロシア国営のタス通信は3月30日、ウクライナ軍が最大で40km先まで飛行可能な新型ドローンを使用し始めたと報じた。この飛行距離は従来のおよそ2倍ということになる。記事は詳細を伝えていないが、飛行距離が伸びたドローンはウクライナのザポリージャ、オリヒウ、トレツク、クレミンナ、ハルキウの各方面や、ロシア西部ベルゴロド、クルスク両州の国境地帯で確認されたとしている。要するに、どこでも使われているということだ。