米司法省は今週、米銀キャピタル・ワンがクレジットカード大手ディスカバー・ファイナンシャル・サービシズを評価額350億ドル(約5兆1000億円)で買収する取引に承認を与えたと、4月4日に複数のメディアが報じた。これにより、融資額で米最大のクレジットカード会社が誕生することになる。
ブルームバーグは4日、司法省がこの合併を承認する旨のメモを米連邦準備制度理事会(FRB)および米通貨監査庁(OCC)に送付したと報じた。この合併は、最終的にこの2つの規制当局の承認を受けて成立する。
キャピタル・ワンはこの合併で、既存の1億人超の顧客にディスカバーの約3億人のクレジットカード保有者を加えることになる。ロイターはこの合併でキャピタル・ワンが、融資額ベースで米国最大のクレジットカード発行会社になると伝えている。
この承認は、クレジットカード決済市場における「Visaとマスターカードの支配力を弱める可能性がある」とノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院は分析している。さらに、キャピタル・ワンが既存のVisaおよびマスターカードの顧客をディスカバーに移行させることにより、「クレジットカード業界の再編成をもたらす可能性がある」としている(キャピタル・ワンは現在、ビザおよびマスターカードのネットワークを使ってクレジットカードを発行している)。
同大学院はまた、キャピタル・ワンが低所得者層に人気のあるディスカバーの「キャッシュバックつきのデビットカード」を発行することで、新たな顧客を引きつける可能性があると述べている。
一方、民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員らは、この合併が消費者が支払う手数料やクレジットコストの上昇につながると主張していた。カリフォルニア大学バークレー校は、この合併によりキャピタル・ワンが信用スコアが660未満の「サブプライム」層向けクレジットカード市場で大きなシェアを獲得することになると述べている。
この層の利用者が増えることで、キャピタル・ワンにはインターチェンジ・フィー(加盟店の銀行とカード利用者の銀行の間で発生する取引手数料)を引き上げる余地が生まれる可能性がある。
トランプ政権の合併に対する姿勢
昨年3月に発表されたキャピタル・ワンとディスカバーの合併計画は、企業の合併に厳しいスタンスをとっていたバイデン前政権下では、より強い抵抗に直面していた可能性がある。2020年に、決済企業大手のビザはフィンテック企業Plaidを53億ドル(約7700億円)で買収すると発表したが、この計画は、バイデン前政権下の司法省によって阻止されていた。
トランプ政権が今後、大規模な合併案件をどのように扱うかはまだ不明だが、司法省がキャピタル・ワンの合併に異議を唱えなかったことは、現政権がバイデン前政権よりも緩やかな姿勢をとることを示唆している可能性がある。
ブルームバーグによれば、司法省内部ではこの取引に異議を唱えるべきかどうかで意見が分かれていたという。しかし、同省の新たな反トラスト(独占禁止法)部門長のゲイル・スレーターは、合併に反対するために必要な証拠が不足していると判断したとされる。