ウクライナ軍は効果的な電波妨害(ジャミング)でロシア軍の誘導滑空爆弾と航法衛星間の通信を遮断し、この精密誘導弾の多くを目標から逸らしている。これにより、滑空爆弾でのロシア軍の優位性を弱めている。
しかし、そのジャミングもロシア国内にはあまり深く及ばないかもしれない。1日かその少し前、ロシア空軍機がロシア西部ベルゴロド州で、ウクライナ軍の陣地付近のダムを精確に攻撃できたのも、そのせいかもしれない。
🇷🇺💥🏴☠️ Russian Aerospace Forces Destroy Dam Used by Ukrainian Troops Advancing on Belgorod Region
— Zlatti71 (@Zlatti_71) April 1, 2025
▪️ Russian aviation is striking with ODAB bombs to help repel the enemy offensive, destroying access routes for Ukrainian forces near Popovka.
▪️ The 34th Mountain Brigade continues… pic.twitter.com/FeZrDsX0sB
このダムは、ベルゴロド州の国境の村ポポフカ近くで川をせき止めている。ウクライナ軍は昨年8月から侵攻していた北隣のクルスク州で補給線を断たれ、3月に大半の支配地から撤退に追い込まれたが、その直後からベルゴロド州への浅い侵入を始めた。
現在、ベルゴロド州での戦闘はポポフカと、その近隣の村デミドフカ周辺に集中している。3月末時点では両村はおおむねウクライナ軍の支配下にあった。ウクライナのシンクタンクである防衛戦略センター(CDS)のレポートによると、ロシア軍は4月2日ごろ、反撃してデミドフカに進軍した。
ウクライナ側では空軍のSu-27戦闘機が、ロシア軍が増援部隊などを送り込むのに使う橋を中心に爆撃し、現地部隊を支援している。
サーモバリック爆弾
ロシア側も空爆で応酬している。ダムへの爆撃に使われたのは、ODAB-500燃料気化爆弾と伝えられる(編集注:重量約3tのFAB-3000爆弾が使われたとする見方もある)。重量約500kgのODAB-500は可燃性のエアロゾルを散布してから発火させる無誘導爆弾で、これに誘導キットを取り付けて精密誘導できるようにした新型が使用されたとみられる。
ロシアのある軍事ブロガーは「ロシア航空部隊はODAB爆弾で敵による攻撃の撃退を支援し、ポポフカへの占領者の進入路を破壊している」と書いている。
もしダムの破壊が目的だったとすれば、ODAB-500は奇妙な選択だ。そのサーモバリック(熱爆風)効果が最もダメージを与えるのは、人体、とりわけ閉ざされた空間にいる人間の体だからだ。
ダムを破壊して周辺を水浸しにするには、地中貫通型の高性能爆弾を使って土やコンクリートを打ち砕く必要がある。それも、かなり大型の爆弾が必要だ。直接的な破壊力は弱い燃料気化爆弾はある意味、こうした爆弾の対極にある。
だとすれば、今回の攻撃目標はダム自体でなく、ダム付近の野外にいた、もしくは周辺の塹壕や掩蔽地に隠れていたウクライナ軍部隊だったと推測される。
彼らにとって不運なのは、ほかの多くの部隊を守ってくれているジャミングがベルゴロド州には及んでいないとみられることだ。もしそれがベルゴロド州まで及んでいるのだとしても、少なくともこのODAB-500を目標から逸らすことはできなかった。