両陣営とも、送信や妨害のテクニックを絶えず変化させており、そのスピードは、信号パターンのライブラリに基づき、更新に数週間もかかる従来の自動検知システムの能力を凌駕している。
この状況は、米軍にとって中国のような先進的な技術を持つ国との戦争で直面する事態を予見させるものであり、通信技術者の任務はイラクやアフガニスタンよりもはるかに困難になるだろう。
「軍の取り組みが太平洋全域に及ぶ大国間の競争に移行する中、これほど広範囲で高い検知レベルを隅々に行き渡らせるのは不可能だ。唯一の解決策は、一部の業務を自動化することだ」とウルフは言う。
Distributed Spectrumのビジネスアイデアは、高価でかさばるセンシング・ハードウェアを、多くの安価なソフトウェア駆動装置に置き換えるという、ウルフの卒業研究プロジェクトから生まれたものだ。彼は、ハープとストルールとともに商用無線市場にビジネスチャンスを見出し、通信会社が干渉を監視し、周波数帯域を有効利用するのを支援するビジネスを思いついた。
しかし、3人は2021年に国防総省主催のハッカソンに参加したことで、軍が緊急の課題に直面していることを知った。それは、戦場の通信システムが妨害されているのか故障しているのかを判別するのに苦慮しているというもので、そのことを知った彼らは計画を変更した。
彼らは、軍用車両への無線周波数攻撃をリアルタイムで検知するシステムをコーディングし、2万5000ドル(約375万円)の賞金を獲得した。その技術は国防総省の関係者を感心させ、特殊作戦部隊と協力してテストすることになった。それ以来、Distributed Spectrumは陸軍、空軍、海軍と様々なアプリケーションを開発する契約を締結している。その中には、無人偵察機の接近や敵の携帯電話信号の接近を兵士に警告するポータブル・デバイスや、軍事基地周辺の活動を監視する定置型システム、広域で電波スペクトルの異常を検出し、非友好勢力の存在を知らせるセンサー・ネットワークなどが含まれる。
同社は昨秋、インド太平洋地域の広大な海域での使用に適した電子戦ツールのコンセプトを競うコンペで15万ドル(約2300万円)を獲得し、退任するロイド・オースティン国防長官から賞賛を受けた。
ヴルフ、ハープ、ストロールは、ウクライナのパートナーと共に、敵の妨害装置や戦場で隠れた部隊の位置を特定するドローンにこのセンサーを取り付けたという。
Distributed Spectrumのようなスタートアップにとって、国防総省に食い込むのは容易ではない。しかし、同社の出資元であるConvictionを創業したサラ・グオは、創業チームの判断力や、初期段階での契約獲得の実績から、同社の可能性を高く評価している。「彼らには、この問題に本気で取り組もうとするエネルギーがある。それこそが、アーリーステージの企業に求められるものなのだ」と彼女は語った。