米マサチューセッツ州ボストンに拠点を置くスタートアップのTomorrow.io(トゥモロー.io)は、企業向けに人工知能(AI)を活用した天気予報をサービスを提供するため、独自の気象衛星のコンステレーションを構築した。
イーロン・マスクが率いる政府効率化省(DOGE)は、米国政府の気象関連の機関で大規模な人員削減を進めており、同社は、その穴を埋める企業の候補に浮上した。
しかし、Tomorrow.io創業者のシモン・エルカベッツにとって、この話は厄介な問題だ。DOGEが進める国家気象局(NWS)の人員削減は、彼の会社に前例のないビジネスチャンスを与えることになるが、創業9年の同社は、企業向けに気象データを提供する会社であり、政府の仕事を受託する企業ではないからだ。
そんな中、DOGEは、NWSを管轄する米国海洋大気庁(NOAA)の職員の最大20%を解雇し、重要な天気予報施設の閉鎖を提案している。さらに、トランプ政権は、政府の天気予報サービスを民営化する可能性があると推測されている。
「この記事を読む人に、私の会社がNOAAの仕事を奪おうとしていると思われたくない」とエルカベッツはフォーブスに語った。
しかし、DOGEによる予算の削減は、NWSの信頼度の高い気象データの提供を妨げる可能性がある。2月下旬には、NOAAの1000人以上の職員が解雇され、NWSが気象データを収集するために使用する気象観測用のバルーンの打ち上げが遅れている。さらに、米国総務庁(GSA)は、米国全土の天気予報業務を担うメリーランド州の気象センターのリース契約の解除を検討中だ。
2月の上院の公聴会で、商務長官のハワード・ルットニックは、NOAAの予算削減は気象予報の質を損なうことなく実行可能だと主張したが、NWSに匹敵する規模で天気予報データを提供できる民間企業は存在しない。Tomorrow.ioをはじめとするほとんどの気象関連の企業や、スマートフォンの天気アプリでさえも、予測モデルを構築するためにNWSのデータに依存している。
NOAAは気象衛星やバルーン、地上のレーダーシステムなどの多様なツールを用いてデータを収集しており、それを民間企業が再現するためには莫大な資本が必要だ。
エルカベッツが2016年にTomorrow.io(当時の社名はClimaCell)を創業したとき、NOAAのデータが将来脅かされるような事態になるとは想像もしていなかった。彼の発想はシンプルで、気候変動の悪化に伴い、企業は極端な気象現象によるリスクをより正確に把握し、迅速な対応を取る必要があると考えていた。
企業のニーズを満たす気象予報
しかし、既存の気象情報サービスは多くの手作業に依存しており、特に重要なデータが不足している地域では、予測の精度に限界があった。NOAAが提供するような包括的な情報を利用できるのは主に米国に限られており、世界の多くの地域ではその恩恵を受けられなかった。