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サイエンス

2025.04.03 17:30

驚異の体長12m「クジラも捕食」していた超巨大ウミヘビが教えてくれる真実

Getty Images

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太古の始新世(約5600万~3400万年前)の海には、現代からは考えられないような生物が数多く生息していた。そうした興味深い生物のなかには、現生のほぼすべてのヘビ類を圧倒する巨大なウミヘビ「パラエオフィス・コロサエウス(Palaeophis colossaeus)」も存在した。

太古の温暖な浅い海に生息したこのウミヘビの化石は、研究者たちに海生爬虫類が経てきた進化上の実験や、かつて巨大生物が海を支配していた時代についてのヒントを提供している。

体長が大型バスほどもあるヘビが太古の海を静かに進み、獲物に忍び寄る姿を想像してみてほしい。今日ではその巨大な椎骨のみが知られるパラエオフィス・コロサエウスは、ヘビの進化に関する現在の認識に疑問を投げかける存在だ。

この巨大ヘビは、頂点捕食者であったと考えられている。そして、このような大型かつ外温性(体温調節を外部環境に依存する性質)の生物が繁栄できる、複雑な食物連鎖と気候が存在したことを示唆している。

化石となったその骨は、初期の水生適応における進化上の実験について多くの情報をもたらす。海が現在より温暖で、生態系が豊かで、進化の可能性が無限にあった時代を垣間見せてくれるのだ。

始新世の海に生息した巨大ヘビ

パラエオフィス・コロサエウスは、ただのウミヘビではない。記録に残るなかで最大級のウミヘビだ。主に椎骨(脊椎を構成する骨)の化石から、この巨大な海生生物は体長8.1~12.3mに達していた可能性が考えられる。

現生のウミヘビと比較すると、驚異的な大きさだ。現生種で最大級と考えられるウミヘビは、キイロウミヘビのハイロドフィス・スピラリス(Hydrophis spiralis)で、最大全長3mだ。

始新世の前期から中期に存在したパラエオフィス・コロサエウスは、現在はアフリカ大陸の一部となっている海域を泳ぎ回っていた。このサハラ縦断海路(Trans-Saharan Seaway)は温暖で浅く栄養豊富な環境で、巨大なウミヘビだけでなくその他の多くの海生爬虫類が存在していたと推測される。

パラエオフィス・コロサエウスはその大きさから、頂点捕食者の地位を占め、大型の海洋生物や大型魚類、場合によっては初期のクジラさえも捕食していた可能性が考えられる。ひいては変化に富んだ複雑な生態系が存在していたことが示唆され、始新世の気候条件についての理解も促される。

始新世の海洋生態系を知る手がかり

かつての広大なサハラ縦断海路を形成していた堆積物から発見されたパラエオフィス・コロサエウスの化石は、海洋環境が劇的な変化を遂げていた時代の様子を垣間見せてくれる。

パラエオフィス・コロサエウスが繁栄した始新世の海には、巨大な捕食動物からその豊富な獲物まで、多様な生物が生息していたと考えられる。パラエオフィス・コロサエウスが頂点捕食者の役割を担っていたことは、複雑な食物連鎖が存在していたことを示唆する。大型の獲物を豊富に得られたことが、ウミヘビを巨大な体へと進化させた可能性がある。

始新世の海に生息していた水陸両生の原始クジラ「アンブロケトゥス」:GettyImages
始新世の海に生息していた水陸両生の原始クジラ「アンブロケトゥス」(GettyI mages)

さらにこのような化石の研究は、気候や環境要因が外温性生物の体の大きさに及ぼす影響について理解を深めることにも役立つ。パラエオフィス・コロサエウスのような大型の外温性生物は、代謝を維持するために、高い環境温度を必要とすることが多い。そのためこれほど大きなヘビの存在は、現在よりはるかに温暖な熱帯の海が広がっていたことを示唆しており、始新世の気候モデル復元に間接的に役立っている。

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翻訳=高橋朋子/ガリレオ

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