ウクライナのドローン(無人機)は3月20日、ロシア南部サラトフ州エンゲリスにあるロシア空軍の爆撃機基地に対し、この2カ月半で3回目となる攻撃を行った。ウクライナ軍参謀本部の新たな報告によると、この攻撃によって空中発射型巡航ミサイル96発が破壊された。これには、ウクライナへの都市空襲に使用されている弾薬で最も高性能な部類に入るKh-101も含まれると伝えられる。
約450kgの弾頭を搭載するKh-101はTu-95、Tu-160両戦略爆撃機から発射され、時速900km程度の亜音速で飛行して最大2000km以上離れた目標を攻撃する。ウクライナ軍参謀本部は、破壊されたミサイルは3月から4月にかけて使用される予定だったと説明している。
ラドゥガ設計局によって開発されたKh-101の月間生産数は現在、46発前後とみられており、1発1000万ドル(約15億円)以上する。仮に破壊されたのがすべてKh-101だったとすれば、施設などの損傷分を除いても攻撃による被害額は少なくとも9億6000万ドル(約1400億円)にのぼったことになる。
20日、爆発がエンゲリス2空軍基地を揺るがし、大きな煙が立ちのぼった。ウクライナの政府機関、戦略コミュニケーション・情報安全保障センター(SPRAVDI)はその日のうちに、ロシア側のテレグラムチャンネルの報告として基地は「深刻な困難に直面している」と伝えた。だが、実のところ「困難」は2カ月あまり前に始まっていた。
Russian Telegram channels report this morning that Engels-2 airbase—home to Russia’s Tu-95 and Tu-160 strategic bombers, which regularly launch missile attacks onto the people of Ukraine—is now facing serious difficulties. pic.twitter.com/6uijALSmNq
— SPRAVDI — Stratcom Centre (@StratcomCentre) March 20, 2025
ウクライナのドローンは1月8日、少なくとも640km飛行してエンゲリス2への燃料補給施設を攻撃した。爆発により、最大80万tの燃料が貯蔵されていた広大な施設で大規模な火災が発生した。火は燃え続け、ようやく鎮火したのは6日後のことだった。だがその直後の14日、再びドローンが襲った。「悪しき者に平安はない」とSPRAVDIは警告した。
そうなのかもしれない。ただ、エンゲリス2の被害は修復できる。また、ラドゥガはKh-101の生産を増強できる可能性もある。一方のウクライナは、この基地を繰り返し攻撃していくのに必要なディープストライク(遠距離打撃)用弾薬を確保するのに苦労するかもしれない。