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2025.04.02 13:30

銀行業界がもっとも注目する「北國」の改革

杖村修司|北國フィナンシャルホールディングス 代表取締役社長

杖村修司|北國フィナンシャルホールディングス 代表取締役社長

「北國銀行はいったいどうしたんだ」

2021年に持ち株会社に移行した前後、取引先からこの言葉をもらうことが多かったと、北國フィナンシャルホールディングス(以下、北國FHD)の代表取締役社長杖村修司は言う。銀行業務や取引への不安を感じて発せられたように聞こえる言葉だが、杖村の話を聞くとどうも様子が違う。

北國FHDは予想外の取り組みで話題となっていた。15年に営業ノルマの廃止、投資信託の販売手数料ゼロ、さらにコンサルティング企業の立ち上げや、20年代に入り銀行界初の基幹システムのクラウド化、24年に地域通貨の発行……、次々に新しいかたちが生まれるたび、冒頭の言葉は枕詞のようについてまわった。

「今の時代、地方銀行の姿はそのままでいいはずはない。じゃあどんな銀行がいいのか? それは限りなく先進的で、アナログからの移行であり、法人、個人それぞれのお客様が持つ課題に、あらゆる側面から話を深められる。人口が減っても景気が変わってもサステナブルな銀行であるためには、私たちが変わらないとだめなんです」

現在、北國FHDは、コンサルティング会社のCCイノベーション、投資会社としてQRインベストメント、そして北國銀行を含め金融関連企業11社をまとめる。コンサルティング業は外部企業と提携することも多い領域だが、「自前で成長させていった」。銀行業だけではない、幅広い事業が揃うことが、新しい金融機関の姿だという。

「ほかの銀行さんが今まで通りシェア争いや残高争いをしている時に、北國さんは何をしているんだとよく言われました。しかし、お客様との付加価値が何なのかを考えようよ、という営業マインドが重要なんです。この意識の変革が最も大変でした」
 
現場のマインドセットに注力し、金融とコンサルなど多様な連携を進めていったことで認知は進み、「いったいどうしたんだ」の驚きは手ごたえに変わっていった。例えば、北國銀行とコンサルティング会社のCCイノベーションの営業が揃って客先に出向いても、顧客は役割を理解し、「今日はコンサルさんだけでいいですよ」と言われるまでに浸透した。
 
マインドセットを説く杖村の改革思考は、北國でのキャリアとともに大きくなっていった。杖村の祖父と父も北國銀行に勤めていたが、杖村自身は商社志向だった。何事にも広く興味をもつ性質を生かした方向に進みたかったが、「長男で地方出身。昔は進路を決めるのもそう簡単ではなかった」。大学を卒業後、金沢に戻り北國の一行員としてスタートした杖村は、その時からすでに改革の意識を芽吹かせていた。

「不満だらけでした。当時、役員だった父とは現場の行員の私と意識のギャップでけんかが絶えない。しかし、『弱い犬ほどよく吠える。ならば自分で変えてみろ』と言われ、ハッとしました」

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文=フォーブス ジャパン編集部 写真=苅部太郎

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