経営・戦略

2025.03.25 12:00

米遺伝子検査企業「23andMe」が破産、経営難と非公開化プロセスの頓挫で

Shutterstock.com

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米国の遺伝子検査会社の23andMeが連邦破産法第11章の適用を申請し、資産売却プロセスを開始した。経営難に陥った同社の共同創業者であるアン・ウォジスキは、会社を非公開化しようと試みていたが、資産売却に外部の入札者として参加する意向を示し、役職を辞任した。

23andMeは、事業価値を最大化するための売却プロセスを進める目的で、ミズーリ州の連邦破産裁判所に申請を行ったと3月23日付けのプレスリリースで発表した。同社は、このプロセスの間も事業を継続するとし、顧客データの保管や管理、保護の方法には「一切変更がない」と述べている。

裁判所が破産の計画を承認すれば、同社は45日間にわたり入札を募り、複数の入札者が現れた場合にはオークションを実施する予定だとしている。

23andMeは、ウォジスキがCEOを辞任したことも発表したが、彼女は今後も同社の取締役会にとどまるという。ウォジスキは先月、投資会社のニュー・マウンテン・キャピタルと提携し、同社の発行済株式を1株あたり2.53ドルで買収する入札を試みたが、この取引は失敗に終わっていた。

今月初めに、ウォジスキは改めて1株あたり41セントという大幅に低い価格で買収を提案したが、この取引も、同社の独立取締役による特別委員会によって即座に拒否されていた。

ウォジスキは、X(旧ツイッター)の投稿でCEOを辞任したことを明かし、「このような結論に至ったことや、入札が拒否されたことは残念だが、私は会社を支持しており、入札者として引き続き取引に関与するつもりだ」と述べている。

23andMeは、2021年にリチャード・ブランソンが設立した特別買収目的会社(SPAC)との合併を経て上場した。同社の時価総額は、上場直後に60億ドル(約8990億円)に達し、ウォジスキはビリオネアとなっていた。

しかしその後、同社は利益を上げられず、株価は99%以上も下落した。さらに、2023年にはハッカー集団が複数のユーザーのログイン認証情報を推測し「DNA Relatives」という機能を利用して、システムに侵入し、さらに多くのユーザーの情報をスクレイピング(抽出)するという大規模なデータ漏えい事件が発生した。

盗まれたデータはハッカーのフォーラムで共有され、犯人側は、アシュケナージ系ユダヤ人(東欧諸国にルーツをもつユダヤ人)に関する100万件のデータポイントがサンプルに含まれていると主張した。さらに、このデータには、マーク・ザッカーバーグやイーロン・マスクといったテック系富豪のものだとされる未検証のデータが含まれていたと報じられた。

ハッカーは、データを盗まれた人々の性別や祖先の情報などにもアクセスしていた。この漏えいを受けて提訴された23andMeは、影響を受けたユーザーに3000万ドル(約45億円)を支払い、3年間のセキュリティ監視を提供する条件で和解していた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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