北半球でこの時期、空が暗くなると東から昇ってくる星座にある暗い星「かんむり座T星(T CrB)」が、来週にも約80年ぶりに爆発しそうだと専門家が明らかにした。これまでの観測記録に基づく予測によれば、最短で3月27日ごろに待望の新星爆発が起こり、北極星と同じくらいの輝きを放つ可能性がある。爆発後しばらくの間は肉眼でも見えるようになるとみられる。
かんむり座T星は、地球から約3000光年離れた「北の王冠」の異名をもつ星座、かんむり座にある連星系天体だ。エネルギーを使い果たした恒星の残骸である白色矮星と、老化して膨張し物質を放出している赤色巨星から構成されている。
この連星系は、およそ80年周期で白色矮星が爆発現象を繰りかえす「再帰新星(さいきしんせい)」で、前回は1946年に爆発が観測されている。

かんむり座T星では、赤色巨星から流出する物質が時間をかけて白色矮星の表面に降り積もり、やがて熱核爆発を引き起こす。この爆発によって急激に明るさが増し、普段は暗すぎて見えない星が肉眼でも見えるようになる。
かんむり座T星は1787年と1866年にも爆発した記録があり、1946年の観測記録と併せて、新星爆発の時期を予測できる天体である。約76年ごとに地球に接近するハレー彗星が次にいつ出現するかが予測可能なのと同じだ。
かんむり座T星は爆発寸前
かんむり座T星は新星爆発の前に減光することが、これまでの観測からわかっている。アメリカ変光星観測者協会(AAVSO)は、2023年3~4月に爆発の予兆となる光度の低下があったとして、2024年4月ごろに爆発が起こると予測していた。このとき期待された新星爆発は観測されなかったが、天文学者たちは以来、かんむり座T星を注意深く見守ってきた。

米SETI研究所の天文学者で、かんむり座T星の観測プロジェクトを実施予定のスマート天体望遠鏡メーカーUnistellar(ユニステラ)の共同設立者であるフランク・マーチスは、「昨年9月以降の詳細な観測により、待望の爆発が目前に迫っていることを示唆する変動が見つかっている」と電子メールで明かした。ただし「この研究はまだ理論的な段階であり、結論は不確かなままだ」とも述べている。
米国天文学会(AAS)発行の研究ノートResearch Notes of the AASでは、かんむり座T星は2025年3月27日ごろ、同11月10日ごろ、または2026年6月25日ごろに爆発すると予測している。
かんむり座T星の見つけ方
かんむり座は7つの星が半円形に弧を描いている星座で、うしかい座とヘルクレス座の間にある。北半球ではこの時期、日没の約3時間後に東の空に昇ってくる。日が落ちてから4時間もすれば、探すのは簡単だ。

まず北東の空に北斗七星を見つけて、「ひしゃくの柄」のカーブをそのまま伸ばしていく。真東の方角で明るい星に出会ったら、それがうしかい座の1等星アルクトゥルスだ。次に北斗七星の真下あたりから昇ってくる、こと座の1等星ベガを見つけよう。この2つの1等星の間、ややアルクトゥルス寄りを探すと、かんむり座が見つかる。
より天文学者的な見つけ方としては、アルクトゥルスとヘラクレス座の球状星団M13の間を探すという方法もある。
