米電気自動車大手テスラの分析を担当する中でも有名で、最も楽観的な見方を示しているアナリストが、同社は「危機」に瀕していると警告を発した。イーロン・マスクが最高経営責任者(CEO)として再び会社経営に専念する必要があると断言している。
ウォール街は、マスクがトランプ政権で物議を醸している政府効率化省(DOGE)を率いていることについて、時間を取られすぎていると反発している。
「マスクはここで方針転換する必要がある。(中略)テスラの将来はそれにかかっている」。ウェドブッシュ証券のダン・アイブスは、19日夜の顧客向けメモにこう記した。
マスクがDOGEの責任者としての役割に「110%」の時間を捧げていることで、「テスラは本質的に政治的シンボルと化してしまった」とアイブスは指摘。これは「悪いこと」だとして、テスラのショールームがさまざまな抗議活動や破壊行為の標的となっている点や、今年に入ってテスラの販売台数が急減している市場があり、マスクの政治的偏向との関連を指摘するアナリストがいることなどをほのめかした。
そのうえでアイブスは「マスクと取締役会が立ち上がり、沈黙をやめ、テスラにおいて生じつつあるこの危機の解決を促進するよう強く求める」と訴えている。
金融情報サービスの米ファクトセットによると、テスラ株が低迷する中でも、アイブスは目標株価を米アナリストで最も高い550ドルに設定したままだ。これは20日の株価232ドルからは130%以上の上昇を意味する。この点で、今回のメモの内容は特に注目に値する。
アイブスによれば、マスクはDOGEから「一歩退く」必要がある。投資家の神経をなだめるためにマスクが取れる方法は主に2つあり、それはテスラのCEOと大統領顧問の役割を少なくとも「両立させる」計画があると正式に発表することと、テスラの低価格車と完全自動運転の展開について待望の最新情報を提供することだという。
テスラ株は昨年12月に史上最高値を付けたのち、52%下落した。失われた市場価値は7000億ドル(約104兆円)を超える。20日朝の株価は約2%下げ、9週連続の下落が現実味を帯びている。