テスラをめぐっては、カナダの投資銀行RBCキャピタル・マーケッツやみずほ証券などが目標株価を大幅に引き下げたほか、ゴールドマン・サックス、JPモルガン、UBS証券が納車台数予測を下方修正するなど、証券会社の多くがネガティブなレポートを発表している。JPモルガンのアナリスト、ライアン・ブリンクマンは先週「自動車業界の歴史において、ブランド価値がこれほど急速に失われた例はなかなか思いつかない」と記した。
マスクは昨年、親トランプ派の団体や共和党の運動に総額2億8800万ドル(約428億円)を寄付。トランプ政権では連邦政府の支出削減を担当する上級顧問として、非常に強力な役割を担っている。マスクの時間の使い方に対するテスラ投資家の不満は、今に始まったことではない。2022年には、440億ドルでソーシャルメディア企業のツイッター(現X)を買収したことを市場が嫌気し、テスラ株が70%近く下落した。その後、人工知能(AI)への取り組みをめぐって楽観論が広がったことで関連株が広く上昇し、テスラの株価も回復した。
ウォール街からの珍しくも明るい兆候としては最近、キャンターフィッツジェラルド証券のアナリスト、アナンド・バラジとアンドレス・シェパードが、テスラの評価をニュートラルからオーバーウェイトに格上げしている。2人はテスラ株の低迷を、ボラティリティに耐えられる長期的な視野を持つ投資家にとって「魅力的なエントリーポイント」だと主張。年内にサービス開始を予定する自動運転タクシー(ロボタクシー)と開発中の人型ロボット「オプティマス」を楽観視の理由に挙げた。
テスラの株価下落は、米政界の有力者の間でも話題になっている。昨年の米大統領選で民主党の副大統領候補に指名されたミネソタ州知事のティム・ワルツは18日、下落傾向にあるテスラ株を毎日チェックしていると発言。19日にFOXニュースに出演したハワード・ラトニック商務長官は、マスクの会社の株価が「こんなに安いのは驚くべきこと」だから「テスラを買う」よう視聴者に勧めるという極めて異例の行動に出た。ラトニックは商務長官就任人事が先月の議会で承認されるまで、キャンターフィッツジェラルドのCEO兼会長を務めていた。
フォーブスの最新の試算によると、マスクの純資産は3270億ドル(約48兆6500億円)。長者番付トップで、2位以下に1000億ドル以上の差をつけている。しかし、保有資産のうち最大の比率を占めるのは、この6年間で初めてテスラの持ち株ではなくなり、航空宇宙企業スペースXの持ち株となった。