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政治

2025.03.18 09:00

ウクライナ停戦の罠 米国はプーチンの術中に嵌っているのか?

bella1105 / Shutterstock.com

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米国の圧力の下、ウクライナはロシアの同意を条件に、30日間の停戦に合意した。ウクライナ政府は、米国からも欧州からも確固たる安全の保証を得ることなく譲歩した。これは厄介な外交上の失策である。

計算高い戦略家であるロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、この展開に好機を見いだしている。プーチンの野心は変わっていない。かつてソビエト連邦が領有していた地域の実効支配を取り戻し、中・東欧においてロシアの権勢を再び拡大し、最終的には北大西洋条約機構(NATO)を分断しようと目論んでいる。プーチンのこの最終目標は、西欧における米国の影響力を著しく弱体化させ、米経済に大打撃を与えるだろう。

プーチンが用いる交渉の手口は予測できる。まず、いわゆる「不本意な花嫁(reluctant bride)」戦略とでも呼ぶべき行動に出るはずだ。すなわち、交渉のテーブルについたというだけで大幅な譲歩を引き出そうとするだろう。プーチンの要求はわかりきっている。ウクライナ新政府の樹立、欧州治安部隊のウクライナ領内への駐留禁止、西側諸国による軍事援助の縮小・廃止、ウクライナ東部4州とクリミアにおけるロシアの主権の即時承認などだ。

停戦の可能性に幻想を抱くべきではない。ロシア軍は前線であらゆる防衛上の脆弱性を逆手に取り、ウクライナが合意に違反したと非難してのけるだろう。プーチンはこの戦術を何度も使っている。基本的な現実は変わっていないのだ。プーチンは、ウクライナが信頼に足る安全保障を備えた真の独立国家として存続するためのいかなる取り決めも、決して受け入れない。プーチンが求めているのは、外交を装った降伏である。

最も懸念されるのは、プーチンの腹積もりだ。米政府の戦争終結への熱意が、軍事援助や情報共有を制限するかたちでウクライナ政府への圧力となり、事実上の降伏に追い込むだろうとの打算がプーチンにあるのではないかという憂慮には、まったく根拠がないわけではない。欧州には、特に米国の関税引き上げの脅威に直面した場合、これまで米国が行ってきた軍事援助や情報共有を肩代わりする能力と決意の両方が欠けている。

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翻訳・編集=荻原藤緒

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