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海外

2025.03.17 08:00

年間売上150億円、伝統な「健康スープ」で米国の健康オタクの支持を獲得した企業

Shutterstock.com

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米国の食品業界で今、脚光を浴びているのが、動物の骨や魚介類の殻を長時間煮込んで作る「ボーンブロス」と呼ばれる食品だ。関節痛の緩和や腸内環境の改善、肌の弾力性の向上などのさまざまな効果があるとされるこのスープは、健康意識の高い人々の間で特に人気で、粉末やカプセルなどのサプリメントを合わせた市場規模は、数年後には16億ドル(約2380億円)に達すると予測されている。

現在35歳の起業家のジャスティン・マレスは、自身が健康的だと考える食品を提供することを目指し、ボーンブロスのブランド「Kettle & Fire(ケトル&ファイアー)」を立ち上げた。彼が2015年に弟のニックとと共同で設立した同社の年間売上は、1億ドル(約149億円)を超える規模にまで成長した。

Kettle & Fireの製品は、厳格な基準を満たしたグラスフェッド(牧草飼育)の牛肉を、14〜20時間かけて煮込むことで、高レベルのコラーゲンやアミノ酸、ビタミン、ミネラルを抽出している。マレスとそのチームはまた、健康意識の高い人々が嫌う食品添加物や植物油を製品から徹底的に排除することで、顧客の支持を獲得した。

Kettle & Fireの製品は現在、全米約2万2000カ所のウォルマートやホールフーズ、ターゲットの店舗に加えて、アマゾンや自社のサイトで販売されている。同社の製品は、食品スーパーのスープ売り場の中で最も高いリピート購入率を誇り、このカテゴリーに新たな顧客を呼び込んでいる。

Kettle & Fireの事業は成長を続けているが、マレスは同社を非上場のままにし、自身のやり方で運営していきたいと考えている。そのため、彼とニックは昨年末に、新たな投資家グループの支援を受けて、初期の出資者の持ち分を買い取った。この取引で彼らは4300万ドル(約63億9000万円)の出資を受けたが、その際のKettle & Fireの評価額は2億ドル(約297億円)とされた。

弟の怪我で知った健康効果

マレスがボーンブロスの効果を知ったのは、26歳のときに当時19歳だった弟のニックがサッカーをプレイ中に膝の靭帯を2本断裂したのがきっかけだ。クロスフィットの愛好家だったマレスは、このスープに含まれるオメガ3脂肪酸やコラーゲン、ゼラチンなどの必須アミノ酸が弟の怪我の回復に役立つと考えた。

また、ネットを検索するうちに、腸や髪の健康を目的に栄養価の高いボーンブロスを求める人々の大きな市場があることを知った。しかし、この市場は未開拓だった。彼はその当時、常温保存が可能で、100%グラスフェッドのボーンブロスを販売しているブランドを1つも見つけることができなかったという。

ボーンブロスは、何千年もの間、中国医学で重要な役割を果たしてきたが、米国でもかつてはキャンベルのスープの多くがボーンブロスをベースに作られていた。しかし、現在の米国のスーパーで見かける多くのスープは粉末を用いたもので、栄養素が後から添加されている。また、大量生産されるスープストックの多くは、そもそも本物の動物の骨を使用していない。

伝統的な製法へのこだわり

「過去40〜50年で、スープの製造の現場では、栄養価の高い肉の塊を長時間かけて煮込む伝統的な手法から、質の悪い余り肉を短い時間だけ煮込み、香料や添加物を加えて人工的なうま味を作り出す手法に変わってしまった」とマレスは語る。「人類は何世代にもわたってボーンブロスを食べてきたが、それはこのスープが栄養価の高いものだったからだ。しかし、今ではほとんどの企業がその伝統的な製法をやめてしまった」と彼は続けた。

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編集=上田裕資

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