経営・戦略

2024.09.11 08:00

米最大級のチーズメーカー、Sargentoを支える「家族経営」の理念

SargentoのCEOのルイ・ジェンティン(左)と副社長のMike McEvoy(右)(C)sargento

年間売上高が18億ドル(約2560億円)の米国のチーズメーカー「Sargento(サージェント)」は、最も売れ筋のチェダーやモッツァレラ、ストリングチーズの品質に磨きをかけつつも、非公開企業のままだ。3代目CEOのルイ・ジェンティンは競争を生き抜くための戦略を持っている。

多くのチーズメーカーは、製品開発に数百万ドル規模の資金を費やすが、マーケティングにはあまり資金を投入しない。しかし、ジェンティンは、新たな製品のプロモーションに数百万ドルを投じている。

「私はこれを大きな賭けとは呼ばない。なぜなら、これらは賭けではないからだ。我々のこれまでの投資は、素晴らしい成果を収めている。成功の方が失敗よりも多い」と語る49歳の彼は、2013年に父親からCEOの座を引き継いだ。

この戦略は、創業71年目になるサージェントが140億ドル(約1兆9900億円)規模の米国のチーズ市場におけるシェアを拡大するのに役立っている。米国で最も売れているナチュラルチーズブランドに成長した同社の市場シェアは、ジェンティンが経営を引き継いでからの10年間で20%増加し、全体の13%に達している。

今もなお100%の家族所有で運営されるサージェントは、競合との価格競争や業界の統合化の中で優位性を保っている。同社のジェンティンを含む60人の株主は、すべて創業者のレナード・ジェンティン(1986年没)やその妻のドロレス(2012年没)の子孫であり、フォーブスは、彼らの持ち株の価値を合計11億ドル(約1576億円)と推定している。

チーズ業界においては、家族経営が他の食品分野よりも一般的で、サージェントは、他の家族経営の大手と競争している。その中には、年間売上高が推定35億ドル(約5016億円)のデンバーを拠点とするモッツァレラメーカーのLeprino Foods(レプリーノチーズ)や、同126億ドル(約1兆8059億円)のカナダの上場企業Saputo(サプト)が含まれる。

そして、チーズ業界の頂点に立つのが同じく家族経営のラクタリスだ。このフランスを拠点とする世界最大のチーズメーカーは、ヨーグルトブランドのStonyfield Organicや、2021年にクラフト・ハインツから32億ドル(約4586億円)で買収したチーズ事業を所有している。フォーブスは、同社を率いるCEOのエマニュエル・ベスニエと彼の2人の兄弟の合計の資産を432億ドル(約6兆1920億円)と推定している。

サージェントは、これらの巨大企業と比べると中規模で機動力のある企業だ。米中西部で4つのチーズの製造拠点を運営し、自社の輸送フリートで製品の25%を配送する同社は、数十年前に食品大手のクラフト・ハインツがチーズ部門にあまり注力していなかった時代に、その隙をついてシェアを拡大した。

チーズ業界は利益率が低いことで知られ、カナダのサプトの場合、今年の純利益率は1.5%、過去5年間の平均は3.4%だった。サージェントは、具体的な数字を明かしていないが、ジェンティンがCEOに就任して以来、利益が3倍に伸びたと述べている。同社は、競争力を保ち、売上を伸ばすために、広告やスーパーの物流サポートに最も多くのコストを費やしている。

「我々のように一貫して革新を続けているブランドは、この分野で他にない」と語るジェンティンは、13歳で家業を手伝うようになり、チーズを運ぶトラックの洗車を行っていた。
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編集=上田裕資

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