「トランプ2.0」やビットコインの価格の乱高下などを背景に、Web3業界に再び注目が集まっている。今こそ考えるべき、Web3の本質とは。イーサリアムの「価値の伝道師」が語る。
ブロックチェーンをベースとしたスマート・コントラクト・プラットフォーム、Ethereum(イーサリアム)を活用して、世界中でさまざまなインパクトが創出されている。Web3を取り巻く現状と注目のプロジェクトについて、イーサリアム・ファウンデーションの宮口あやに聞いた。
──Web3の現状をどうとらえていますか。
宮口あや(以下、宮口):Web3が投機的な側面で注目が集まることは過去に何度もあった。今回も波のひとつに過ぎないととらえている。本来、ブロックチェーン技術を利用して発行されるトークンの価値は、実績や実質などと連動すべきものだ。だが、クリプト(仮想通貨)に関しては、投機的な価格高騰に実績などが伴わないことがよくある。
一方、イーサリアム上のアプリケーションに必要なネイティブトークンであるイーサ(ETH)は価値の乱高下がだんだん少なくなってきた。イーサリアムは誰もが使えるインフラだ。この公共財を活用して、人々が自らの手で世の中の役に立つアプリケーションや公共サービスを構築するところに本質的な価値がある。技術面でもコミュニティの観点からも、政治や世論、マーケットの動きに左右されない力強さが備わってきた。これは良い兆候だ。
──Web3の原則のひとつに、ユーザーによって構築・運営・所有される「非中央集権的な分散化」があります。
宮口:分散化し、さまざまな人が参加できるほうが、イノベーションが起こりやすくスピード感も高まる。何が必要なのかは、そこで暮らす人たちが最もよく知っている。一方、世の中に目を向けると、第三者が介入し、完成したものを渡すケースが散見される。このような思考とは異なったアプローチが重要だと考えている。
──イーサリアムの技術を使って、さまざまなインパクトが生まれています。
宮口:最近感銘を受けたのは、ブータン王国の国王が主体となってイーサリアムブロックチェーンベースのデジタルIDの導入を進めていることだ。ユーザーが自分のID認証情報をもち歩けるように、すでに専用のアプリを試験的に導入している。
ブータンは2008年4月に国王自らの手で民主化を果たした。国王にお会いしたとき、政府に万が一のことがあっても国民のIDが影響を受けないように分散型の仕組みを整えたいというビジョンを語っていらした。権力をもつ方がそのように考えておられることに私は感銘を受けた。