欧州

2025.03.08 09:30

ロシア軍の民生車両、ぬかるみにはまりドローンの餌食に ウクライナに泥濘期到来

Irik Bik / Shutterstock.com

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専用設計の装甲車両が一般に、金属製のキャタピラ(無限軌道)か大型の太いオフロードタイヤを備えているのには理由がある。機械化部隊は目的地へ進んでいく際に、傷んでいない舗装路をいつも当てにできるとは限らないからだ。

ロシアによるウクライナに対する3年あまりの全面戦争の戦場で、キャタピラもオフロードタイヤも履いていない民生車両でやりくりするようになっているロシア軍は、その自明の理を忘れてしまったのかもしれない。しかし、戦域全体で気温が上がり始め、冬のあいだ凍っていた土が泥に変わるにつれて、それを痛切に思い起こすことになるだろう。

道路がこのようにぬかるむ現象やその季節は、ウクライナで「ベズドリジジャ(道無し)」と呼ばれる。今年のベズドリジジャはウクライナ東部ですでに犠牲を出し始めている。ドネツク州チャシウヤールのすぐ北で4日かその少し前、ロシア兵らを乗せたロシアの小型車ブランド「ラーダ」の1台がぬかるみにはまった

動けなくなったラーダはウクライナ軍にとって格好のカモだった。爆弾を抱えたFPV(一人称視点)ドローンが突っ込みで爆発した。

チャシウヤール方面では6日、ロシア軍が車両およそ25両を投入した大規模な突撃も行っている。これらの車両はまだ凍結していた地面を走れていたようだが、やはりウクライナ軍のドローンや大砲の攻撃を受け、少なくとも14両が焼損するか遺棄されたと報告されている

兵站も阻害する泥濘

泥とドローンの組み合わせは、歩兵部隊と同じくらい兵站部隊も苦しめている。冬から春に変わるにつれて未舗装路などはどんどんぬかるんでくるため、ロシア軍の補給車両は舗装された幹線道路を使い続けるしかない。だがその舗装路は、ウクライナ軍のドローンの攻撃にさらされて圧迫されている。こうした「道路遮断ドローン」は舗装路を走るロシア軍の補給トラックを多数破壊しており、その残骸もまた道路の通行を妨げる格好になっている。

ロシアのある軍事ブロガーは最近、エストニアのアナリストのWarTranslatedが英訳して紹介している投稿で「ポクロウシク付近の状況はきわめて厳しい」と認めている。さらに「チャシウヤール付近ではわれわれ(ロシア軍)がわずかに前進しているものの、同じ問題にさいなまれている。兵站が攻撃され、マンパワー(人的戦力)が不足しているという問題だ」とも指摘している。

ロシア軍は、これらの問題はこの先、改善するどころか悪化すると覚悟したほうがいい。道路がぬかるんでくるにつれて、もともとそうした道に向いていない民生車両が泥にはまるケースは増える。そして、立ち往生した民生車両は、ロシア軍の補給トラックも次々に爆破しているウクライナ軍のドローンの格好の餌食になる。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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