トランプ米大統領の支持者たちは、昨年の選挙関連のイベント会場でTシャツや赤い「MAGA」のキャップ、さらにはトランプの彼の顔が描かれたコインまで、あらゆる記念グッズを購入していた。そして、一部の支持者たちは、それらのグッズの購入が「投資」につながり、トランプが当選すればグッズの価値が上昇し、利益が得られるという話を聞かされていたが、それは詐欺だった。
フォーブスが入手した警察の捜査令状によると、アラバマ州のある女性は通信アプリ、テレグラムのトランプ支持者が集まるグループを閲覧していた際に、「グッズを持っているだけで報酬を得られる」という話を見つけたという。彼女は、自分が持っているトランプのグッズで収益を得られかもしれないと思い、その仕組みを宣伝していたアカウントに連絡を取った。
すると、グッズの写真を送れば、1300万ドル(約19億円)の「リベート」を貰えると言われたという。ただし、そのためには、暗号資産で15万2000ドル(約2240万円)相当の取引手数料を支払う必要があると告げられた。捜査令状によると、彼女はその手数料を詐欺師のウォレットに送金したが、リベートの話は宙に浮いたままになった。
これは、2020年代初頭から広まった「トランプ・リベート・バンキング(TRB)」と呼ばれる詐欺の最新の形態だ。詐欺師たちは、「トランプ関連のグッズは、彼が大統領に就任すれば莫大な価値を持つようになる」という話で支持者たちを騙していた。この詐欺の被害額は通常、数千ドル程度のものだったが、アラバマ州の女性のケースでは、より大規模な詐欺となった。
捜査令状によると、この女性は、リベートを受け取れなかった後、現地の警察に通報した。その結果、連邦捜査局(FBI)は昨年11月に取引所のバイナンスに命じて盗まれた資金を凍結させており、彼女の資金は戻って来る可能性が高いという。
オンライン上には今もなお、トランプ支持者を狙った詐欺が多数存在する。フォーブスは、テレグラム上でこのような詐欺を広めるアカウントが、まだ複数存在することを確認した。さらに、同様の詐欺は、トランプの盟友であるイーロン・マスクが所有するX(旧ツイッター)上でも多数見つかった。
「トランプ大統領の名前を使って詐欺をしたり、商品を売りつけたりするのは本当にひどいことだ」と、あるユーザーは投稿していた。また、価値が上がるという話を聞かされて、4万ドル(約600万円)をトランプのグッズに投じたというユーザーも確認できた。しかし、そのような被害者たちの投稿に対し、さらに別の詐欺アカウントが、「今すぐキャッシュアウトを手助けできます」という話を持ちかけていた。
Xは、フォーブスのコメント要請に応じなかった。
心理的な弱点を突く詐欺師
セキュリティ企業ESETのサイバーセキュリティアドバイザーであるジェイク・ムーアは、このような詐欺が広まる理由を次のように説明した。
「こうした詐欺は、被害者の心理的な弱点を巧みに突くものだ。多くのトランプ支持者は、政治的にも財政的にも彼を支持し続けている。そのため、グッズの価値が上昇するという話は、彼の影響力への信頼と合致することから、支持者たちを引き込みやすい」