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ビジネス

2025.03.07 10:15

360度ステークホルダー戦略が導く日本企業の「再創業」

iQ360のCEOのロリ・テラニシ氏(中央)とシニアアドバイザーのジョン・オノダ氏(右)、および筆者(左) Courtesy of the author

iQ360のCEOのロリ・テラニシ氏(中央)とシニアアドバイザーのジョン・オノダ氏(右)、および筆者(左) Courtesy of the author

近年、日本における企業ガバナンス問題に焦点が当たる中、企業の戦略的なステークホルダー対応の重要性が再認識されている。ステークホルダーを意識した経営者レベルでのコミュニケーション戦略は、以前から米国の大手企業で認識され、経営陣の最重要課題として取り組まれてきたが、日本においてはその課題意識はまだ極端に低い。

今回、米国を拠点とする戦略的コミュニケーションファーム「iQ360」の創業者である日系米国人のロリ・テラニシ氏と、シニアアドバイザーのジョン・オノダ氏から、日本企業がグローバル市場で競争力を強化するために必要な「多面的ステークホルダー戦略」について話を伺った。


吉川:日本では、ここ最近フジテレビの騒動などで、対外的なステークホルダー・コミュニケーションのあり方が関心を集めています。企業が危機に直面した際に、企業を取り巻く数々のステークホルダー(株主、消費者、パートナー、社員など)に対して、どのタイミングでどのように戦略的にコミュニケーションをとるかが、その企業の今後を大きく左右すると言っても過言ではありません。iQ360では、このような企業のステークホルダーへの戦略的コミュニケーションを専門にアドバイザリーを行っていますが、そもそもの創業の経緯について教えていただけますか?

テラニシ:はい。私はハワイ出身の日系アメリカ人4世ですが、グローバル企業のコミュニケーション部門やプロダクト開発の分野でキャリアを積んだのち、米国で複数のコミュニケーションエージェンシーを立ち上げてきました。その中で、伝統的な広報活動やPRを超えた、企業戦略の中枢としての戦略的コミュニケーションの必要性を認識し、CEOや取締役会に対して直接この分野の支援をするための会社としてiQ360を設立しました。会社の名前は、企業を取り巻くさまざまなステークホルダーを念頭に「360度」の角度でコミュニケーションを戦略化するという狙いからきています。

吉川:iQ360のシニアアドバイザーであるオノダさんは、ゼネラルモーターズ(GM)、Visa、リーバイス、チャールズ・シュワブといった錚々たるグローバル企業のコミュニケーション責任者として、長年、企業コミュニケーションの最前線を歩んでこられましたが、その中で、どのように「多面的なステークホルダー・コミュニケーション」が重要性を増してきたのでしょうか?

オノダ:米国では、30〜40年ほど前から自動車産業やテレコム産業などの、規制が厳しい産業において、「多面的ステークホルダー戦略」のコンセプトが認識されるようになりました。これらの産業では、政府、労働組合、業界団体、消費者などあらゆるステークホルダーと信頼関係を構築し維持することが、企業の成功の鍵を握ると認識されています。企業の文化や戦略に沿ったコミュニケーション戦略を展開することが、経営トップ層の重要課題として取り組まれてきました。近年、この多面的ステークホルダー戦略が、特定の業種だけではなく、すべての業種で重要視されるようになってきています。そこで、私は、これまで実務家として経験し学んできたことを、より幅広い産業において、経営陣をサポートすることで普及させたいと思ったのです。

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文 = 吉川絵美

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