ビジネス

2025.03.07 10:15

360度ステークホルダー戦略が導く日本企業の「再創業」

iQ360のCEOのロリ・テラニシ氏(中央)とシニアアドバイザーのジョン・オノダ氏(右)、および筆者(左) Courtesy of the author

吉川:米国においては、コミュニケーション部門の立ち位置が、特にここ数年で、より経営の中枢に近くなってきていると感じています。これまで、コミュニケーションというと、製品のプロモーションやPRなど、マーケティング部門の実行部隊としての意味合いが大きかった部分がありますが、ここ最近は「多面的ステークホルダー戦略」というアングルから企業の戦略と直結した、CEO直下の機能になっている企業も多くなってきている印象です。

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テラニシ:そうですね、米国では企業のコミュニケーション機能に対する認識が確実に変わってきていると感じています。私たちiQ360では、CEOや取締役会が直面する問題について、多面的ステークホルダー戦略という角度で、問題を診断し、それに対応する戦略を導きます。その意味で、我々は、伝統的なPR会社とも違いますし、戦略コンサルティングファームとも異なります。突発的なクライシス(危機)に対する対応の他にも、企業のステークホルダーの価値観や反応を理解した上での中長期の戦略策定の支援もしています。 

サンフランシスコにて、テラニシ氏(左)、オノダ氏(右)と筆者(中央) Courtesy of the author
サンフランシスコにて、テラニシ氏(左)、オノダ氏(右)と筆者(中央) Courtesy of the author

吉川:これまで手がけてきた案件には、例えばどのような事例がありますか?

テラニシ:ハワイアン航空とアラスカ航空の合併案件が挙げられます。両社は当初2023年末に合併案を発表しましたが、その後、反トラスト法による合併阻止のリスクに晒されました。さらに地元に根差した航空会社が無くなってしまうことへの懸念が地域住民の間で高まりました。そこで、弊社が戦略アドバイザーとして参画し、経営陣が従業員、労働組合、規制当局、地域コミュニティ、顧客と積極的にコミュニケーションをとるためのステークホルダー戦略を構築しました。効果的な戦略を構築するためには、それぞれのステークホルダーの価値観やモチベーションを理解することが非常に重要です。その理解のもと、それぞれのステークホルダーに対する最も適切なエンゲージメント戦略を練ります。本案件では、その戦略と実行が功を奏して、ステークホルダーからの信頼を勝ち取ることができ、最終的には規制当局からの承認を獲得することができました。

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文 = 吉川絵美

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