ビジネス

2025.03.07 10:15

360度ステークホルダー戦略が導く日本企業の「再創業」

iQ360のCEOのロリ・テラニシ氏(中央)とシニアアドバイザーのジョン・オノダ氏(右)、および筆者(左) Courtesy of the author

吉川:数字を超えた、ステークホルダー理解とそれに基づく戦略が鍵となっていきますね。この数十年、日本企業はグローバル市場で苦戦を強いられています。再度、存在感を示していくには何が必要だと思いますか?

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テラニシ:今後の企業経営には、従来の枠にとらわれないリスクテイキングや「実験」するマインドセットが必須です。日本企業は「リファウンディング(再創業)」を真剣に考えるべきタイミングがきていると思います。グローバル市場のダイナミクスをよく理解して、ローカライズされたコミュニケーション戦略を策定することは、我々が言うところのリファウンディング・モメントの鍵となります。日本は、自らの伝統を大切にしながらも、新たな潮流に対応してきた実績があります。80年代に日本企業が大成功したのも、自らのユニークな企業精神を土台としながらも、世界の動きに柔軟に対応してきたからこそです。今、まさに同じ岐路に立っていると思います。日本が長い歴史の中で培ってきた「長期的視野」や「ステークホルダーへの敬意」を土台にしつつも、激動の時代に迅速に対応していくことで、日本企業は再復活できると思います。

iQ360のCEOのロリ・テラニシ氏(左)とシニアアドバイザーのジョン・オノダ氏(右) Courtesy of the author
iQ360のCEOのロリ・テラニシ氏(左)とシニアアドバイザーのジョン・オノダ氏(右) Courtesy of the author

吉川:正に、日本は明治維新、そして戦後において、リファウンディング(再建国)してきた歴史がありますね。


オノダ:その通りです。日本人は大きな変革を成し遂げる力をもっています。今こそ、再びそれを実行するときです。人口減少が進む中で、日本企業はこれまで以上に効果的かつ大規模に国際市場で成長していく必要があります。そのためには、企業文化や働き方のモデルを見直し、アメリカ、中国、インドなどの競争相手に打ち勝たなければなりません。特に、人工知能(AI)、宇宙、ロボティクス、遺伝子工学、再生可能エネルギーなどの未来産業をめぐる競争が激化する中で存在感を示していくには、大胆な変革が必要となります。変革の成否は効果的なコミュニケーションに大きく依存します。米国のような非常に多様で政治的にも影響を受けやすい環境においては、ステークホルダーの認識は複雑であり、繊細なコミュニケーションが必要です。一律のメッセージでは通用せず、企業はステークホルダーグループに合わせて、慎重にアプローチを調整する必要があります。

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文 = 吉川絵美

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