今回は、UCバークレーのハース・ビジネススクール (Haas School of Business) で24年以上も続く人気講座「事業機会の探索:シリコンバレーのテクノロジーと起業 (Opportunity Recognition: Technology & Entrepreneurship in Silicon Valley)」の教鞭をとるJon Metzler氏から、シリコンバレーの起業エコシステム、そして日本への示唆について話を聞いた。

Jon:はい、もともと2000年に前任のAndrew Isaacs先生が開設した講座で、私は当時、ハース・ビジネススクールのMBAの学生として受講していたんです。卒業後はスタートアップやコンサルティングの現場で経験を積んだ後、2014年以降、自分もハース・ビジネススクールで教鞭を取るようになり、今年からIsaacs氏の依頼でこの講座を引き継ぐことになりました。歴史のある人気講座なので、プレッシャーも感じていますが、非常に光栄なことだと思っています。
吉川:具体的には、この講座ではどのようなことを学べるのでしょうか?
Jon:この講座では、起業家が事業を立ち上げ成功させるまでの重要なマイルストーンにおいて必要なスキルや知識を、著名な経営理論を参照しながら学びます。
例えば、ビジネス立ち上げの初期段階においては、事業機会を正しく認識・判断するためのツールとして、ジェフリー・ムーアの「バリュー・プロポジション(顧客価値)」のフレームワークを通して事業のポジショニングを検討します。そして、故クレイトン・クリステンセン教授の「破壊的イノベーション理論」にもとづいて、既存の大企業の事業に対しての差別化について議論します。そこから、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間の「キャズム(溝)」をどう越えるか、そして「トルネード期」に突入したらどのような戦略を適用すべきか、などについて見ていきます。つまり、起業家にとって事業展開のさまざまな局面に効果的に対応するための有用なツールを提供しています。さらに、ケーススタディや実務家のゲストスピーカーを通して学びを深めます。
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