中東や北アフリカ地域のテクノロジー企業に特化した投資グループのDisrupt.comが2月27日、1億ドル（約150億円）規模のファンド立ち上げを発表した。アラブ首長国連邦（UAE）を拠点とする同社は、「ベンチャービルダー」を自称する3人のパキスタン出身の家族によって設立された。
アーキブ・ガディットとウザイル・ガディット、ウマイル・ガディットの3人は、これまで複数のビジネスを立ち上げてきたが、その中には、2022年に米国のDigitalOceanに3億5000万ドル（約520億円）で売却されたクラウド企業のCloudwaysが含まれている。
「Cloudwaysの売却は、パキスタンのテック業界で史上最大のエグジットになったが、もっと多くのこの地域の成功事例を生み出したい」とアーキブは述べている。彼が力を注ぐのは、中東と北アフリカを合わせた地域である「MENA」の市場とパキスタンの市場だ。
「この地域には、驚くべき情熱と高度な能力を持つ起業家たちがいるが、彼らは資金面やビジネス面での支援を必要としている」と、アーキブは語る。
Disrupt.comの創業者たちは、ベンチャー投資において「1つのモデルが全てに適用できるわけではない」と考えている。そのため彼らは、ゼロから自社でスタートアップを立ち上げる取り組みや、他の起業家と共同で新たな事業を築く取り組み、そして他社への戦略的投資の取り組みの3つのアプローチで、スタートアップを支援する計画だ。
Disrupt.comが投資対象とするのは、プレシードからシリーズAまでの段階の企業で、特に重点を置く分野としては、サイバーセキュリティやWeb3.0、自動車テクノロジー、小売のイノベーションの4つのカテゴリに挙げている。さらに人工知能（AI）を、重要なテーマに位置づけている。
Disrupt.comは、これまで約4000万ドル（約60億円）を、複数の企業に投資しており、投資先には、50万人以上のユーザーを抱えるWeb3.0プラットフォームのZigChainや、サイバーセキュリティ企業のPureSquare、UAEを拠点とするフィットネスアパレルブランドのSquatwolfなどが含まれている。さらに、気候変動対策ツールのAhyaなどの、AIを活用したスタートアップにも戦略的投資を行っている。
Disrupt.comは、将来的に世界中の市場で投資を行う計画だが、現状では特に起業家への支援が減少しているMENA地域に重点を置いている。UAEの調査会社マグニットのデータによると、MENA地域における昨年のベンチャー投資額は、前年比29％減の20億ドル（約2990億円）弱にとどまっていた。また、サウジアラビアのスタートアップへの投資額も、前年比44％減の7億5000万ドル（約1120億円）だった。
