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2025.03.03 17:15

人形町今半のブランドの価値の再発見 「おもてなし」とフェアな経営とは

「腹をくくる時が来た」

──2023年7月、お兄様の髙岡慎一郎氏(現・会長)から社長を引き継ぐことになりましたが、これはどういった理由からでしょうか?

私と兄は5、6年前から、「いい会社を作るためには、我々二人がお互いの価値観をすり合わせる場所と時間が必要なんじゃないか」ということで、つど議題を提示してとことん二人で話す会を月に2時間ほど設けています。

今から3年ほど前、兄と話す「二人会」で、社長交代の話が出ました。2023年のタイミングでと決めたのは、「コロナ禍が終わったら何かを変えよう」と。我々の世代から次の世代にバトンタッチの準備をするようなイメージもあったんです。

──社長交代を告げられたとき、どんな気持ちでしたか?

「ああ、いよいよだな、腹をくくる時期に来たんだな」という感じでしたね。実際は、社長が兄から私に移ったとしてもあまり変わらないんです。結局、同じことをずっと二人で一緒にやってきたので。現に今、二人とも代表取締役で社長と会長の違いだけですから、社員にとってはあんまり変わった感じはないじゃないかと思います。しかし私の感覚では、社長・副社長の違いはエベレストと高尾山以上の違いがありますね。

コロナ禍で見えてきたビジネスの価値と可能性

──社長就任直前にコロナ禍という長く苦しい時期がありました。今ようやくそこを抜けて、会社として得た教訓や見えてきた課題は?

コロナの最中は、人流が止まり飲食やケータリングサービスといった集いのビジネスはすべてダメになりましたが、精肉や惣菜、通販など、ご家庭で召し上がる食ビジネスは非常に伸びました。

コロナ禍をきっかけにネットの通信販売部門は400%成長しました。食文化は習慣化していくので、コロナ禍の終焉で一気にマイナス400%になるということはありません。

また、創業当時から我々の付加価値を最も認めてご贔屓いただいたのは法人顧客ですが、コロナ禍が終わると個人がトップになっていました。個人消費を牽引したのは、飲食店や惣菜店を利用するインバウンドです。

もしかすると今、日本の中に、そして世界の中に、人形町今半のブランドが補える「叶えたいこと、お困りごと」があるのではないか。その「叶えたいことやお困りごと」が何かを明示したら、当社ブランドの本当の価値が出てくるのではないか――いろんなビジネスが起きるし、お客様にとっての価値も高まっていくわけです。今後は、そこを見極めていこうと考えています。

独自の成果指標「顧客価値」とは

──社長に就任されてから新たに始めたことは?

我々には「お客様第一主義」という経営理念がありますが、実際の現場では「お客様第一主義」よりも売上や営業利益ベースで判断することが結構あります。ただ、人形町今半の現場の「お客様第一主義」に惚れ込んできた社員にとってジレンマにもなっています。

そこで、「お客様第一主義」に関する理念教育について、もう一度巻き直しをしています。人形町今半のブランドと価値を、言語化・体系化する取り組みを3カ年計画で浸透させる取り組みが、始まったばかりです。従業員20名程度を対象に私一人で語り、その後に対話をする「社長フォーラム」を一回4時間、正社員を対象に年間550名に実施しています。

──「言語化・体系化」で、具体的に進めていることはありますか?

ひとつは「顧客価値」を成果指標にしようということです。「顧客価値」は「お客様第一主義」の事業をしている従業員にとって、最も興味があり大事な価値です。

仮説として、付加価値から営業変動費を引いたものを「顧客価値」と定めました。お客様が素晴らしい商品、つまり自分の叶えたいことやお困りごとを回避してくれるような価値と出合うためには、マーケティングと営業努力という「経費」が必要です。

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