おいしさの「見える化」に挑戦
「新鮮さ」を絶対視する鮮魚市場に、「熟成」という新たな価値観を提示した赤坂。次なる挑戦は、熟成魚の美味しさの「見える化」だ。23年にはソフトバンクと共同で、魚の鮮度やうまみの測定手法の確立に向けた品質規格標準化プロジェクトを始動。光センサーによってアミノ酸やイノシン酸などのうまみ成分を測定する技術を開発している。プロの料理人らによる食味試験も踏まえ、熟成や冷凍加工の品質基準づくりを進める。
「魚のおいしさを数値化することで、生産者は品質管理がしやすくなります。また、牛肉のような等級制度を策定できれば、より多くの消費者に熟成の価値を理解してもらえるはず」。赤坂の挑戦を支えるのは、やはり、数学好きからくる定量的思考だ。
世界の水産物需要は増加の一途をたどっており、養殖魚の生産量はこの40年間で約10倍に増加。一方、日本では15%も減少している。その一因である後継者不足を解決するべく、赤坂水産は地域の養殖業者3社と共同で「JABURO」を設立。大型いけすやAI・IoT機器の導入を推進し、「白寿真鯛0」の生産ノウハウを共有している。マダイの養殖を組織的に成長産業に育てることで、雇用を生み出し地方創生にもつなげていく。
19年に他界した初代(祖父)はこんな言葉を遺した。「これからは、自ら資源をつくり、海と共存していかなければならない」と。赤坂はこれを機に、「日本の海の価値を証明する」とパーパスを掲げるようになった。
「海は国民共有の財産です。その海をどう活用するかは、生産者に委ねられている。水産資源を増やし、持続可能なかたちで海を守ることが、私たちの役割なのです」
赤坂竜太郎◎1985年、赤坂水産創業者・赤坂剛男の孫として愛媛県西予市に生まれる。立命館大学・大学院で数学を専攻後、2010年に東京で保険会社に就職。2012年、27歳で家業の赤坂水産に入社し、2015年からマダイの養殖事業を担当。19年には低魚粉と白ゴマで育てた「白寿真鯛」を、22年には魚粉“ゼロ”の「白寿真鯛0」を開発した。