AI・SaaSが変わらずトップを牽引


国内のセクター別の概況をまとめてみた。資金調達金額はSaaSが2981億円でトップ。2位はAIの2686億円、3位はエネルギー・環境の2058億円だった。
SaaSはクラウド人事労務ソフトを提供するSmartHRが7月にシリーズEラウンドで214億円の調達(第三者割当増資およびセカンダリー取引)を実施した。AIは生成AIの開発を手がけるSakana AIが牽引。KDDIから出資を受けた東京大学発スタートアップのELYZAも話題となった。今後は「AI×製造業」といった日本の強みを生かしたスタートアップの活躍にも期待がかかる。
なお、上記グラフでは、同一企業に複数のセクターが登録されている場合があるため、各セクターの合計値は資金調達総額・社数とは一致しない。
IPOは昨年と同水準 買収がより活発的に

24年のスタートアップのEXIT概況について、IPOと買収の件数を経年推移でまとめたのが上のグラフだ。買収件数には合併や事業譲渡を含まない。
IPOは61件で低調な状態が続いているが、スタートアップの買収の件数は年々増えており、24年は178件(前年比32.8%増)で大幅に伸びた。M&Aやセカンダリー取引の活発化により、IPO以外の選択肢が広がった。背景には、IPO市場の低迷や資金の流動性確保の問題などがある。
M&Aにおいては、大企業がオープンイノベーションを加速させる手段として、スタートアップを買収するケースが増えている。
スタートアップによる買収も増加傾向

また、スタートアップがスタートアップを買収するケースが目立つ。24年は96件で、20年の52件から84.6%も増えた。
24年の象徴的な例としては、二酸化炭素排出量の見える化サービスなどを展開するアスエネが、10月にESG(環境・社会・企業統治)のデータ収集・分析を手がけている東大発スタートアップのE4Gを、12月にはAPI連携サービスを提供するAnyflowを相次いで買収した。
ロールアップ型M&Aが上場会社のみならず、未上場スタートアップのコーポレートアクションにも取り入れられていることは注目に値する。
明日公開予定の後半記事では、スタートアップの出口戦略に焦点を当て、IPOやM&Aの概況について解説する。