多くの組織が従業員の競争心を喚起するのは、生産性とイノベーションの向上を期待してのことだ。確かに、適切なかたちで働きかければ、職場の競争は有益な場合がある。しかし、同じやり方を用いても、不健全なライバル心が生じて、職場環境に悪影響が及んだり、従業員のあいだに敵対心が生まれたりすれば、逆効果になりかねない。
職場では、大方の人が予想している以上に、従業員同士が競い合っている。履歴書作成サービスResumeLab(レジュメラボ)が実施した調査では、80%以上の人が「職場内で同僚と競い合ったことがある」と回答した。また、同僚との競争について、「健全なライバル関係だった」と答えた割合は69.6%と半数を超えたものの、30%あまりは「有害なライバル関係だった」と回答した。
健全な競争であれば、同僚は「好ましいライバル」だ。同調査では、「自分が働いている組織は、健全な競争環境を育んでいると思う」と答えた従業員の割合も調べている。「好ましいライバル」がいる従業員がそう答えた割合は、「好ましくないライバル」がいる従業員と比べて2倍だった。
職場の競争がプラスのものとなるかマイナスのものとなるかは、部下のモチベーションを高めるリーダーのやり方次第だ。競争することで従業員が高揚するのであれば、創造的な行動につながるかもしれない。一方、競争することで従業員が不安や恐れを抱くのであれば、倫理にもとる行動が誘発されるおそれがある。
以下では、職場の競争に伴うプラス面とマイナス面を検討し、競争がプラスに働くようなバランスの取れた文化を生み出すにはどうすればいいのかについて説明していこう。