こうした行為は私たちの精神・感情面でのウェルビーイングを少しずつ蝕んでいる。常に忙しくしていると頭が過熱状態になり、疲労や集中力の低下を引き起こす。
忙しい状態が延々と続くと、人付き合いが希薄になりがちだ。次に取り組まなければならないタスクに気を取られて周囲の人と十分に交流せず、つながりが浅くなったり有意義な交流の機会を逃してしまう。
そうしたことから、生活に「空白」の時間という概念を取り入れることが重要だ。空白の時間とは、生活する上で意図的に作り出す「間」のことで、雑事から離れて静かに何もせず過ごすひとときだ。
絵画やデザインの余白がその美しさを引き立て、着目すべきところが一層目立つようになるように、生活にも空白の時間があることですっきりとした思考を取り戻し、創造性がかき立てられ、感情を処理することができる。
このような意図的に設ける何もしない時間は、精神衛生を向上させ、交流を深め、そして慌ただしい現代においてバランスを取るために不可欠だ。
ここでは空白の時間が成長に寄与する3つの理由を紹介する。
1. 意図的な「退屈」で自己を統制
退屈は自己統制と内省を促進する上で重要な役割を果たす。哲学者のアンドレアス・エルピドローは退屈をテーマにした本で、退屈は単に心地悪さを経験するものではなく、ニーズが満たされない状況に陥ったときに変化を起こす必要があることを知らせる有用なサインだと強調している。
退屈な状態はまた、自分の価値観や願望に沿う活動や方向性を模索する気持ちを起こさせ、自己認識が高まる。
同様に空白の時間、つまり私たちが自分のために設ける静かで何もしない時間は、変化を起こす必要性を悟るのにうってつけだ。退屈であることが私たちに何を伝えようとしているのかに耳を傾けることができるのは、このような何もしないときだ。空白の時間があることで私たちは振り返ったり、どこで行き詰まりを感じているかを把握したり、さらには優先順位に沿って物事を微調整する余裕が生まれる。
そうして自己認識を新たにし、意図をもって前進することができる。何もせず耳をすますときに、最も有意義な一歩を踏み出すことがある。
1日の始まりか終わりに、スマホなどの端末や注意を削ぐものをあえて遠ざけて10分だけ静かに過ごすのはどうだろうか。その間、以下のようなことを自問してみてほしい。
・今日は何が有意義だったか
・どういった点に行き詰まりや疲れを感じるか
・明日は何に集中したいか
このシンプルな習慣は自分の目標を再確認し、最終的な目標からかけ離れているタスクを排除するのに役立つ。