2. イノベーションと問題解決を促進
専門誌『コングニティブ・サイエンス』に掲載された「認知負荷理論」に関する古い研究によると、脳の処理能力には限界がある。脳に負荷があまりにかかると、創造的な問題解決を必要とするタスクをうまくこなせなくなる。脳が常に情報にさらされていると、立ち止まって振り返るチャンスがほぼない。このような認知負荷が大きい状態は、アイデアをつなげたり創造的に考えたりする能力を妨げる。空白の時間は「緩衝地帯」となり、プレッシャーの少ない環境で一歩引いて考えを整理できるようになる。
休憩中に内省することで、以前はかけ離れていた複数のアイデアが結びついてイノベーションにつながる。例えば、創造的な大発見の多くは散歩中やシャワーを浴びているとき、あるいはただ窓の外を眺めたりしているときなど、頭が何かに占領されていないときに起こる。
圧倒されるような問題から一歩引いてみると、新鮮な視点が得られることが多い。潜在意識が裏方として問題に取り組み続け、思いがけず「ひらめき」の瞬間が訪れる。
専門誌『モレキュラー・サイキアトリー』に2022年に掲載された研究によると、脳が休息状態にあるときにはデフォルトモードネットワーク(DMN)が活性化する。
デフォルトモードネットワークは内省や創造性、自己関連付け的な思考に関わる領域をつないでいる神経回路だ。ぼんやりとしているときや内省しているときなど、このネットワークが活性化すると脳はこれまでの経験を統合し、一見無関係に見える複数の概念を結びつけることができるようになる。
認知負荷が大きくなければ内省的な状態に入るゆとりが脳に生まれ、以下のようなことが促進される。
1. アイデアの創出:デフォルトモードネットワークは、斬新で創造的な発想につながる複数のアイデアの合体に役立つ。
2. 問題解決:デフォルトモードネットワークは過去に得た知識や経験を統合することで、往々にして潜在的な洞察を通じて課題への新しいアプローチを可能にする。
3. 内省と革新:空白の時間はデフォルトモードネットワークが適切に機能するための環境を整え、自己関連付け的な思考を可能にし、革新的な解決策を生む。
空白の時間を設けることで脳が持つ創造的な潜在能力が活き、革新的なアイデアや新鮮な解決策が自然に生まれる。